トップと補佐役の関係が成立するためには、一定の条件がある。その条件とは、両者の置かれた現実的条件だけではなく、人格・パーソナリティ・生き方がうまく合致することであり、これは幸運に恵まれなければ成立しないことであるかもしれない。この関係がうまくいけば、トップの持つ創造性が、補佐役の持つ現実的な能力によってうまく活かされ、花開くのである。
解説
トップの多くは天才であり、創造性の高い人である。それに対して補佐役は現実的・実務的だ。
補佐役として生きていくためには、トップの創造性、天才的な要素を発見し、それを助けようという気持ちにならなければならない。トップの価値観や理想に共鳴し、その夢や目標に同一化できた時、大きな成功をつかむことができる。
また、補佐役としての役割を果たすには、自分の性格とトップの性格を見極める必要がある。トップには欠陥もあるだろうが、そうした欠陥は補佐役としての自分が求められる条件でもある。欠陥はあるが、才能があり、支える価値があると考えられるような相手でなければならない。
では、自分が同一化できるトップに恵まれない場合はどうしたらいいのか。この場合、トップと補佐役の関係は成立しない。しかし組織への忠誠心があれば、企業や組織自体を同一化の対象として、補佐役としての献身を行うことはできる。
編集部のコメント
三国志における劉備玄徳と諸葛孔明。ホンダ(本田技研工業)の本田宗一郎と藤沢武夫、松下電器産業(現・パナソニック)の松下幸之助と高橋荒太郎…。歴史に残る指導者の陰には、名補佐役が存在します。
では、彼らはいかにしてトップを支えてきたのでしょうか。
『補佐役の精神構造 リーダーを支えた名参謀の条件』では、精神科医である小田晋氏が、古今東西の指導者とその補佐役を取り上げ、彼らの精神構造や行動特性、そしてトップと補佐役との関係性を明らかにしています。
小田氏によると、天才と呼ばれる人物の多くは、脳内物質であるドーパミンの量が多い「ドーパミン過剰症候群」であるといいます。彼らは普通の人が思いつかないような物事のつながりを発見する能力がある一方で、対人関係や日常的な物事の処理が不得手な傾向があります。
もし、そうした人が経営者であれば、経営が破綻し、立ちいかなくなる可能性のあることを小田氏は指摘します。そして、彼らが経営者として成功するには、経営的な能力を持った人がそばにいなければならないと述べています。
その好例が、ホンダの創業~成長期を支えた本田宗一郎と藤沢武夫の関係です。本田氏は、直感やひらめきで行動を開始し、行動しながら考えるタイプだったそうです。そんな本田氏の才能を最大限に発揮できるよう、藤沢氏は裏方に徹し、経営の環境条件を整えることに努めたといいます。
経営は、トップに才能があれば成功するものとは限りません。ある面ではリーダーより優れ、リーダーに不足している部分を補ってくれる「補佐役」の存在が重要であることを、2人の関係から学び知ることができます。
本書では名参謀の事例の他、補佐役がトップと良好な関係を築くためのポイントなども紹介しています。経営者や組織のトップにとっては優れた補佐役を得るため、また補佐役の人にとってはトップと良好な関係を築くために、この本が説く名参謀の条件はきっと参考になることでしょう。




