日本生産性本部が2012年に行った調査で、約8割の課長が「自分は部下を褒めている」と回答したのに対し、「上司は褒めるほうだ」と感じている部下は約5割しかいないことがわかりました。上司の「褒めているつもり」は、あまり部下に伝わっていないということです。

解説

 これは、無理もない話ではある。今の課長世代は「甘いことを言っていると本人のためにならない」と、あえて厳しい言葉をかける上司の下で育った。自分が褒められることがなかったから、「褒めて育てる」ができないわけだ。
 だが、若い部下世代は親や教師から褒められて育っており、それが当然のこととなっている。
 ここで重要なのは、どちらがいい・悪いではなく、上司としては部下の感覚に合わせるしかないということ。なぜなら、「いいことをしたら褒められる」とインプットされてきた部下たちは、褒めてもらわなければ、自分がとった行動がいいのかどうかわからないからだ。褒められなかった彼らは、やがてその行動をとらなくなる。
 褒めることは、部下にこびることではない。部下のいい行動を、繰り返し引き出すことだ。それによって、部下は成長する。
 普段から部下を観察し、褒められるところを探そう。書類の提出期限を守ったら、「偉いじゃないか、これからも頼むよ」。顧客訪問件数が増えたら、「頑張っているね、その調子だよ」。
 たったこれだけのことを、言えないはずはない。

編集部のコメント

 部下が自発的に動き、高い業績を残せる――。
 上司なら誰しも、そんな「いい職場」を望むもの。
 『できる課長がやっている52の行動 行動科学を使った「いい職場」のつくり方』は、その望みを実現するヒントを、「行動科学マネジメント」の専門家が示した書です。

 行動科学マネジメントとは、人間の行動原理に基づいた科学的なマネジメント手法のこと。
 本書は、この手法の重要な概念である「非金銭的報酬」を重視して、上司が部下と接することを説く点に特徴があります。非金銭的報酬とは、金銭的報酬以外の達成感や自己肯定感、成長できている実感、といったものです。

 著者が掲げる「上司がとるべき52の行動」は、いずれも行動科学マネジメントの理論に裏付けられており、「いつ・どこで・だれが」やっても、同じ効果が得られるといいます。「やる気」や「根性」は人によって異なるものですが、取ってほしい「行動」を明確にし、非金銭的報酬によって報いることで、部下は誰もが自発的に動き、勝手に育っていく ―― 。そう本書は述べています。

 「部下を観察し、褒められるところを探す」「「YES BUT」を封印する」「コミュニケーションの回数を計測する」等々、上司がとるべき行動はいずれも簡単なものばかり。ともすれば「当たり前」にも見えるものです。
 ですが著者は、長く低迷が続いた日本にあって、生き残る企業は「当たり前のことを当たり前にやっている」と説きます。
 例えば、部下を褒めることを、本当にきちんと実行できているでしょうか?
 上掲の調査結果が示すのは、それが現実には必ずしも簡単ではないということです。

 そんな「当たり前のことを当たり前に」やるために、本書は52の知恵を示しています。ツールを使った工夫から心構えまで、どれも日々の行動にすぐ取り入れられるものです。
 「部下がなかなか育たない」という悩みを抱えるすべてのリーダーに、ぜひ一読をお勧めします。

2014年5月号掲載

できる課長がやっている52の行動 行動科学を使った「いい職場」のつくり方

部下が自発的に動き、高い業績を残せる職場 ―― 。上司なら誰もが望む、「いい職場」のつくり方を伝授。カギは金銭ではなく、成長の実感、快適さなど「非金銭的報酬」だ。部下は風通しのいい職場で、わかりやすく仕事を教えてもらい、自分なりに成長したいと思っている。それに応えることで、彼らは素晴らしい働きをするとし、必要なメソッドの数々を紹介する。

著 者:石田 淳 出版社:朝日新聞出版 発行日:2014年2月
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