あなたは繰りかえして読む本を何冊ぐらい持っているだろうか。それはどんな本だろうか。それがわかれば、あなたがどんな人かよくわかる。
解説
世の中に「古典」と呼ばれる本がある。何度も読み返され、時代を経る中で残った本のことだ。
例えばシェイクスピアは、彼が生きていた時代においては、比較的人気のある劇作家の1人に過ぎなかった。ところがそれから200~300年経つと、断然抜きん出た存在になっているのである。
イギリス人は、何百年も舞台でシェイクスピアを見てきた。もちろん他の作者のものも上演されていたが、時が経つにつれ、彼だけは全く別物だということが次第に明らかになってきたのだ。
それは、古典が作られるプロセスをまざまざと示している。時間をかけて、繰り返し上演され、読まれることで、古典となってきたのである。この繰り返しの間に、まさに繰り返すというそのことによって、イギリス人の劇趣味が発達した。
個人の中に、ある本が古典として確立するまでの経過も同じである。古典が形成される秘密は「繰り返す」、しかも「時間の間隔を置いて繰り返す」ということにある。
この繰り返しに耐える本や作者に巡り合ったら、相当に大きな幸福と言ってもよいのではないか。つまり、そういう人は、その人自身の「私の古典」を発見したことになるのだから。
編集部のコメント
『知的生活の方法』は、そのタイトルの通り、「知的生活」を充実させるための実践的な方法を指南した書です。
知的生活とは、どのような生活か? それは、頭の回転を活発にし、オリジナルな発想を楽しむ生活のことです。日常生活の騒がしさに負けず、自分の時間をつくり、データを整理し、それをオリジナルな発想に結びつけてゆく…。慌ただしい現代社会では、誰もがそんな生活に憧れるのではないでしょうか。
そんな知的生活を実現するヒントとアイデアを、碩学の評論家・渡部昇一氏が自らの体験に基づいて教えてくれるのが本書です。
知的生活と聞くと、英国の著述家P・G・ハマトンが1873年に刊行した『知的生活』を思い浮かべる方もいるかもしれません。
それもそのはず。渡部氏は本書の「はじめに」で、『知的生活の方法』を書くきっかけは、この自己啓発論の世界的名著に感銘を受けたことだったと述べています。
ハマトンの『知的生活』の内容は、時間の使い方・金銭への対し方から読書法・交際術まで多岐にわたります。同様に、『知的生活の方法』が説くのも、本の読み方や情報整理の仕方はもちろん、家や書斎の設計、散歩の効用、食事などの日常生活に至るまで、多種多様です。
本書の刊行は1976年。パソコンやスマホが普及するはるか以前ですが、この本が説くアドバイスは依然として示唆に富むものです。むしろ、情報が氾濫する現代にこそ、ますます有効性を増しているといえるかもしれません。
そのことを証明するかのように、『知的生活の方法』は半世紀にわたって読み継がれており、累計部数は118万部を超えています。講談社現代新書の1冊として刊行された本書は、1964年創刊、通巻2700点超という歴史ある同シリーズの中で最大のベストセラーとなっています。
時代や年代を問わず、「知的生活」を志すすべての人に、読むたび何かしら新しい“発見”を与えてくれる良書として、おすすめしたい1冊です。




