プロのカウンセラーの会話が一般の人の会話と違う点は、沈黙と間を多用することです。
解説
日常的な会話では、間が入ると、落ち着かなくなったり、気まずくなったりする。沈黙となると、なおさら場が重苦しくなる。
一方、カウンセリングの会話においては、沈黙が重要になる。この場合の沈黙は、深刻な悩みを抱えている相談者が考えを深め、自分を理解するために必要な時間といってよい。
沈黙や間は、会話が途切れているのではなく、「心の中の会話」がずっと続いているのである。
こうした沈黙や間は、聞き手にもなければならない。聞き手が必要に応じて沈黙や間を入れられるようになると、話し手の会話は続く。
そして、沈黙の後に聞き手が意見をはさむと、会話の主導権は話し手から聞き手に移る。この時に、話し手が沈黙や間を入れると、今度は聞き手の方がしゃべらなければならなくなる。すなわち、主客が転倒するのだ。
主客が転倒すると、場の雰囲気が変わる。この変化には、話し手と聞き手の沈黙に対する迫力の差が関係する。
聞き手の沈黙と間の迫力。それを生むのは、聞き手の度量である。これは、話し手の話す内容が深刻であればあるほど、必要とされるものだ。
話し手と心がつながっていて、迫力のある沈黙や間が入る会話ができるようになれば、「上級の聞き上手」になった証拠といえる。
編集部のコメント
『プロカウンセラーの聞く技術』は、カウンセリングの現場で重視される「聞く技術」を公開した本です。「自分のことは話さない」「評論家にならない」など、一般の人々が「聞き上手」になるための秘訣を、京都大学大学院教授にして臨床心理士の著者が教えてくれます。
2000年に刊行された本書は、20年以上にわたって読み継がれており、45万部のロングセラーとなっています。
「沈黙は金、雄弁は銀」「一度語る前に二度聞け」。こういったことわざがあるように、世間一般では昔から、話すことよりも聞くことの方が大切だと考えられてきました。
ところが不思議なことに、話し方教室やスピーチの本は多数あるのに、聞き方教室や聞き方の本はほとんどありません。どうしてか、と著者は「あとがき」で疑問を呈します。それは、話すことは自己表現であるのに対し、聞くことは相手の表現を受け取ることだからだ、と著者はいいます。話す場合は自分中心に表現の仕方を組み立てられるけれど、自分の方法で聞き方を組み立てることは難しい、と。
しかし、聞く技術を習得すれば、多くの人との人間関係の危機を救い、大切な人との人間関係が構築できる ―― そうプロカウンセラーの著者は説きます。
心理学の専門用語がほとんど使われておらず、聞く技術をわかりやすく習得できる『プロカウンセラーの聞く技術』。本書は組織やプライベートでの人間関係に悩んだり、営業で多くの人と会話したりするビジネスパーソンに、良好なコミュニケーションを築くヒントを与えてくれるでしょう。




