どんな会社でも獲得できる、唯一にして最大の競争優位は、組織の健全性である。だが、単純で、望めば誰でもただで手に入れられるにもかかわらず、ほとんどのリーダーに無視されている。
解説
組織が最大限の成功を望むなら、2つの特性を備えねばならない。「賢明さ」と「健全さ」である。
賢明な組織、すなわち知性の高い組織は、ビジネスの基本である戦略、マーケティング、財務などの問題に適切に対応できる。
一方、健全な組織は、戦略、財務、マーケティングをはじめ、組織内で起こることに一貫性がある。つまり、組織の健全性は統合性の問題である。統合性があれば、経営、営業、戦略、企業文化がぴったりかみ合っていて、理にかなっている。
組織が健全かどうか見分けるには、それを示す指標を調べるといい。その指標とは、社内政治の少なさ、高い勤労意欲、高い生産性、低い離職率などである。
組織の2つの特性、知性(賢明さ)と健全性。このうち、どちらを取るかと問われれば、躊躇なく健全性を取る。その理由は次の通りだ。
健全な組織は、必ず時間とともに賢明になっていく。健全な組織では、リーダーをはじめとして社員が切磋琢磨し、重要問題を見抜き、失敗からの立ち直りが速いからだ。
一方、賢明な組織が、知性によって健全性を高めることはないようだ。知識や知性を誇るリーダーは、自分の弱点に気づきにくく、同僚から学ぼうとしないからだ。心を開いて率直になれないから、失敗からの立ち直りが遅い。
要は、賢明だからといって、必ずしも健全にはなれないということだ。
編集部のコメント
組織の健全性を高めることが、最終的な競争優位をもたらす ―― 。
『ザ・アドバンテージ なぜあの会社はブレないのか?』は、こう説き、健全性の高い組織をつくるノウハウを指南した書です。
著者のパトリック・レンシオーニ氏は、組織と経営チームの強化育成を専門とする、経営コンサルティング会社の創業社長です。
レンシオーニ氏は大学を卒業後、コンサルティング会社に入社し、戦略や財務、マーケティングについて多くを学びます。しかし氏は、クライアントにとって競争優位の最大のチャンスとなるものは、これらではなく組織の運営方法に関するものではないか、と考えるようになりました。
その後、氏は他の企業で働いた後、知人たちと経営コンサルティング会社を起業します。この会社で自らの考えに基づき、組織改善のための実践的な手法を伝え始めたところ、クライアントから熱烈な支持を受けることになりました。また、組織の機能不全を解決する手法を紹介した著書も次々と刊行し、こちらも評判を呼びます。
こうした経験から、レンシオーニ氏は著書やコンサルティング業務で紹介した考えをまとめることを決心します。そして書かれたのが、本書というわけです。
組織づくりという普遍的なテーマを扱った書籍が数多くある中で、20年にわたるコンサルタントとしての観察に基づいて書かれた本書は、企業の大小を問わず、あらゆる組織にとって「強い組織をつくりあげる」ためのヒントを与えてくれるでしょう。