努力には2種類あるということを、皆さんはご存じでしょうか?
その1つは「直接」の努力。もう1つは「間接」の努力です。
解説
「努力こそ人を幸福にする最善の道」と説いた明治の大作家、幸田露伴は上記のように語る。
「直接の努力」とは、当面の努力で、一所懸命に頑張っている時の努力である。
「間接の努力」とは、準備段階における努力で、基礎となり、自分の源泉となる努力である。
人は時々、努力が無駄になることを心配し、嘆くことがある。しかし努力とは、「結果が出そうか・出なさそうか」によって、「するべきか・しないべきか」を判断するようなものではない。
努力というのは、人がいつまでも自ら進んで実行し、やめることをしない、人間性の本質なのだ。だから私たちは、努力すべきなのである。
小さな努力をすれば、小さな結果が出るのが通常だろう。しかし、努力の結果が、必ずしも望んだものでないことはある。
それは、努力の方向が悪いか、あるいは「間接の努力」が足りず、「直接の努力」ばかりに終始しているからだ。無理な願望に対して努力してもそれが実現することはないし、準備段階の努力が欠けていては、叶うはずの願望も叶わない。
「瓜の蔓にナスがなってくれたら」と願うのは、努力の方向が間違っているし、優れた詩や和歌をつくろうとして、ただやみくもに作品を書き連ねて悪戦苦闘しているのは、きちんとコツを学ぶのを怠っているということ。つまり、間接の努力が足りないのである。
編集部のコメント
『努力論』は、明治時代の文豪・幸田露伴が、「努力こそ人を幸福にする最善の道なのだ」と信じ、その理論をまとめた古典的名著です。
『努力論』の現代語訳である本書は、“読みたかったけれど読んだことのない”日本の名著を気軽に読んでもらうために企画された、「いつか読んでみたかった日本の名著シリーズ」の第11弾として刊行されました。現代語訳といっても、いわゆる“超訳”ではなく、原文を忠実に訳しつつ、可能な限りわかりやすい現代語に置き換えたもの。そのため、非常に読みやすいのが特徴です。
著者の幸田露伴は、明治の大作家であり、第一回文化勲章の受章者でもあります。明治22(1889)年『露団々』『風流仏』で名声を確立し、尾崎紅葉と並ぶ作家となりました。代表的な小説に『五重塔』『風流微塵蔵』『運命』などがあります。また、知識人としても知られ、文系・理系を問わずあらゆる学問に精通していたそうです。
そんな幸田露伴が、自己啓発書の名著『人を動かす』(デール・カーネギー)や、『7つの習慣』(スティーブン・R・コヴィー)などよりも前に、日本において世界に通ずるような「生き方論」を説いた本が、『努力論』でした。
『努力論』では、「幸福三説」(惜福、分福、植福)をはじめ、自分を改造する2つの方法、成功の大きさを測る目安など、人が幸せになる上で必要な努力の数々が語られます。その実践的な知識を平易な現代語で学べる本書は、仕事や人生に悩む現代人に貴重な気づきを与えてくれるでしょう。




