比較をする際のまず第一の要件は、「意味ある比較ができるか否か」である。
同じリンゴ同士なら、大きさ・色・形・味などを対等な条件で比較し、優劣をつけられようが、リンゴとミカンを比較しても意味がない。英語では、それは「アップル・ツー・オレンジだから、比較できない」という表現をする。
解説
「比較する」ことは、物事を正しく理解するための最も基本的な分析の手法である。
ただし、比較するといっても、ただ漠然と比較するのでは、有用な結果は得られない。上記のように、重要なのは「意味ある比較ができるか否か」である。
そのための基本姿勢が、「アップル・ツー・アップルを考える」というものだ。同じリンゴ同士なら、大きさ・色・形などを比較して優劣をつけられる。だが、リンゴとミカンを比較しても意味がない。
比較する際のポイントは、次の3点である。
-
- ①できるだけ同じものを比較する
- ②異なるものを比較する時は、意味があり、かつ比較できる指標を探す
- ③似たもの同士を比較する場合も、同じ要素と異なる要素を正しく見分け、異なる部分の影響を勘案しつつ合理的な比較を心がける
例えば、競合他社と開発費の割合を比較する場合。まず、自社と競合他社の規模の差、導入している技術や歴史の差、商品構成や対象とする市場の差などをそれぞれ見極める。
そして、できるだけアップル・ツー・アップルになるよう、場合に応じた妥当な比較のあり方を考えることが必要だ。
編集部のコメント
『意思決定のための「分析の技術」 最大の経営成果をあげる問題発見・解決の思考法』は、正しい経営判断を導くための「分析」のスキルを体系化した本です。ダイヤモンド社のシリーズ「戦略ブレーンBOOKS」の1冊として、1998年に刊行されました。本書は、2022年現在まで20年以上にわたり販売され続けているロングセラーです。
著者の後(うしろ)正武氏は、コンサルタントとして20年近くの経験を持ち、数多くの企業事例に接してきました。「まえがき」によれば、後氏はコンサルタントとして様々な分析に取り組み、工夫を重ねる中で、分析には確かな「切り口」と「方法論」があることに気づいたといいます。それらをまとめ、「分析の技術」を誰もが学べるようにしたのが、『意思決定のための「分析の技術」』です。
本書は、分析の基本として「大きさを考える」「分けて考える」などの4つを挙げます。さらに「バラツキを考える」「ツリーで考える」といったバリエーション、実践的な工夫の仕方などを取り上げ、解説します。これらの手法を様々に組み合わせて用いることによって、複雑な事象を解明する分析が行えるといいます。
常に賢明な判断と選択を迫られるビジネスパーソンにとって、「分析」の質と精度を高めることは重要です。『意思決定のための「分析の技術」』は、そのためのスキルを提供してくれる、ビジネス書における古典的名著としてお薦めします。また、本書の内容は、個人の意思決定においても役立つでしょう。