従来型のMBAプログラムはマネジメント教育のコースだと思われているが、実際には、間違った人間を間違った方法で訓練し、間違った結果を生んでいる。
解説
マネジメントとは本来、「クラフト(経験)」「アート(直観)」「サイエンス(分析)」の3つを適度にブレンドしたものだ。そして、マネジメントはサイエンスよりアートの側面が大きく、さらにそれ以上に、クラフトの側面が大きい。
組織の管理は複雑な仕事であり、ありとあらゆる無形の知識が必要とされる。そういう知識は、実際の経験を通じてしか学べないのである。
ところが、実体験のない学生はクラフトを持っていない。アートについても、その価値がわからない。そうなると、残るはサイエンスだけだ。
従来型のMBA教育は、このサイエンスを教えることにほぼ終始している。その結果、学生たちは、「マネジメントとは分析のこと」だと思い込んでしまう。
MBAとは、「Management By Analysis(分析による経営)」の略である、というのは古くからあるジョークだが、実は笑い事では全くない。
分析とは、「物事を構成要素に分解するプロセス」であり、この「要素に分解する」という作業こそ、MBAプログラムの目指すものに他ならない。ビジネススクールは、ビジネスを諸機能の集合体と見なし、人間ですら分析の対象とする。
だが、マネジメントとは、諸々の業務機能の総和ではない。マネジメントの本質は統合である。マネジャーは個々の状況の中で、一貫したビジョンや組織、システムに物事を統合せねばならない。
この統合を抜きにして分析だけを教えるのは、人間の体を骨の集合体と見なすようなものだ。そこには筋肉や血液もなければ、精神や魂もない。
編集部のコメント
『マネジャーの仕事』『戦略サファリ』などのベストセラーで知られる、経営学の大家ヘンリー・ミンツバーグ。彼が2004年(邦訳は2006年)に刊行したのが、本書『MBAが会社を滅ぼす マネジャーの正しい育て方』です。
本書の特色は、アメリカのMBA(経営学修士)教育を中心としたマネジメント教育の問題点を指摘し、MBA幻想を“一刀両断”にしている点にあります。
高収入やキャリアアップのために、当時(そして現在でも)ビジネススクールでMBAを取得することは大変人気がありました。10年で100万人近くのMBA取得者が経済界に送り出されていたといいます。しかし、そこで教えられている内容について、ミンツバーグ氏は上記のように異義を唱えています。
MBAの何が悪いのでしょうか? 本書は、実際のマネジメント経験がほとんどない若者を対象として教育プログラムが組まれている点にあるといいます。ミンツバーグ氏は、マネジメント教育は現場で実践を積んだ人材を再教育する場にすべきであると強調し、企業人向けの新しいプログラムの構築を急ぐことを提案します。そして本書の後半では、「マネジャーの正しい育て方」について詳述しています。
ビジネススクールの実態や歴史についても説明するこの本は、人材育成・人事担当者やMBAに関心があるビジネスパーソンに一読していただきたい1冊です。




