「噓も100回主張すれば、最後にはすべての人がそれを確かな事実として信じるだろう」
―― パウル・ヨーゼフ・ゲッベルス
解説
大衆を操る戦略の1つに、“プロパガンダ”がある。政府に有利な意見を構築するための世論操作のことだ。プロパガンダは、歴史を通じて、多くの政府で繰り返し行われてきた。
例えば、ナチス・ドイツ。国民啓蒙宣伝大臣を務めたパウル・ヨーゼフ・ゲッベルスは、「社会に対して具体的に何かを納得させるには、うんざりするほど何度もその概念を繰り返すことだ」と語り、大衆を操るために嘘をつく戦略をとった。
上記の言葉は、そのゲッベルスが残したものだ。
また彼は、次のようなプロパガンダ活動の原則を確立したといわれている。
- ・単純化し、敵を絞る原則:1つの思想のみを採用する。敵対者を1人に絞り、唯一の敵にする。
- ・誇張と歪曲:どんなに小さな逸話でも、それを重大な脅威に結び付ける。
- ・消音:不都合な質問は封じ込め、敵を利するニュースは隠す。
- ・全員の同意:満場一致の印象をつくり出すことで、“みんなと同じように”考える多くの人を納得させることができる。
これらの原則の多くは現在でも利用されており、そのいくつかが執拗に繰り返されている。
編集部のコメント
『国際社会を支配する地政学の思考法 歴史・情報・大衆を操作すれば他国を思い通りにできる』は、現代の地政学的戦略の実態を詳細に解説した書です。
著者のペドロ・バーニョス氏は、スペイン軍の予備役大佐、欧州合同軍の防諜・治安部隊長官を歴任、旧ユーゴスラビアの平和維持活動にも参加した人物です。本書は、地政学や国家戦略、国際関係の第一人者として知られる著者の、25年にわたる調査と研究を総括したものとなっています。
著者によれば、「地政学」とは国の地理的位置や歴史と、政治現象との関係を研究する学問のこと。そして地政学の“地”は、限られた領土や具体的な空間を指していたといいます。しかしグローバル化が進んだ現在、“地”は「地球全体」を意味するようになっており、そのためどんな小さな国でも、独自の地政学的戦略を打ち立てざるを得なくなっている、と述べています。
では実際、権力者たちはどのような地政学的戦略を練っているのでしょうか?
この点について、本書では戦略を16に分類、歴史上の出来事や最新の世界情勢を引きつつ解き明かしていきます。紹介される戦略には「隣人を弱らせる戦略」や「間接的に支配する戦略」などがあり、上掲のゲッベルスの言葉は「大衆を操る戦略」の中で登場します。
大国のパワーゲームが激しさを増す今日、その影響はビジネスにも及んでいます。各国がどのような戦略をとっているのか、またその戦略の背景には何があるのか ―― 。ビジネスパーソンにとって、こうした点は教養として知っておきたいところでしょう。『国際社会を支配する地政学の思考法』は、その参考となる本として一読をおすすめします。




