インテュイットには、小切手帳の収支管理を目的としたクイッケンという会計ソフトがあった。そして年月とともに、個人の収支を管理するソフトへと進化を遂げた。これは戦術的な進化である。
ところが、このソフトを事業会計の管理に使う個人事業主が現れ始めた。インテュイットを創業したスコット・クックは、そういう使われ方をするとは思ってもいなかったが、その事実を知ると、中小企業の帳簿を管理するという課題を解決するための商品を新たに開発した。こうしてクイックブックスが誕生し、今日では10億ドルを売り上げる製品となった。(中略)
要するに、個人の当座預金口座を管理するために使っていた戦術に、まったく異なる課題の解決という別の目的を持たせた結果、新しいビジネスモデル、すなわち、プランBが生まれたのだ。
解説
ビジネスモデルを修正する方法、すなわち、最初に立てた「プランA」を環境の変化に応じて「プランB」に進化させる方法は2つある。
1つは、既存の戦術の改善や新しい戦術の開発を絶えず行うことで進化を遂げるやり方だ。ほとんどの戦術は、時とともに効果が薄れていく。だから、戦術を常に見直すことを忘れてはならない。
もう1つの方法は、トップダウン式に上層部が意図的に進化させる「戦略的な進化」である。その好例が、上述のインテュイットだ。
この例のように、プランBは、既存の戦術を使って、全く異なる課題を解決する場合に生じることがよくある。だから、「他に解決できる課題はないか?」と自問自答することは、とても大切である。
編集部のコメント
今は「VUCA」の時代といわれるように、ビジネス環境の移り変わりが非常に速くなっています。VUCAとは、Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の頭文字をとった造語。「社会環境・ビジネス環境の複雑性が増大する中で、想定外のことが起きたり、将来の予測が困難だったりする、不確実な状態」を意味します。
そうしたビジネス環境の変化についていくために、企業には何が求められるのか? 『PlanB 不確実な世界で生きのびるための11の法則』の著者デイビッド・コード・マレイは、「適応マネジメント」という新しいマネジメントのあり方が必要だといいます。
適応マネジメントとは、最初に立てた「プランA」を、環境の変化に応じて「プランB」に進化させるというものです。Facebook(現Meta)のマーク・ザッカーバーグや、Appleのスティーブ・ジョブズなどは、このやり方で偉大な成功を収めた、と本書は説きます。一方で、ポラロイドやゼネラルモーターズといった企業は、時代遅れになったビジネスモデルにしがみつき、新しい世界にふさわしいプランを開発できなかったため、経営破綻したとも指摘します。
では、従来の計画をプランBへと進化させるには、何をすべきなのでしょうか?
本書によれば、適応マネジメントを行うためには、守るべき「11の法則」があるといいます。そして、「課題を特定する」や「勝負の場所を選ぶ」といった各法則について、様々な成功・失敗例を挙げながら解説しています。ちなみに上掲のインテュイットの話は、「プランBに進化させる」(10章)という法則の中で登場します。
事例が多く、読み物としても楽しめるので、戦略の策定に携わる経営者やマネージャーの方々には是非読んでいただきたい書です。




