新規市場を創造するには、顧客ではない層に目を向けて、彼らが自業界の製品やサービスを利用しない理由を熱心に探る必要がある。業界の拡大を妨げる問題点や制約が何であるかを最もよく見通せているのは、顧客ではなく非顧客層なのである。
解説
多くのマネジャーには、「レッド・オーシャンの罠」という思い込みがある。それは、レッド・オーシャン ―― 多数の企業が血みどろのシェア獲得競争を展開する市場にマネジャーをつなぎ止め、彼らの市場創造の取り組みを妨げるものだ。
一例が、「市場創造戦略と顧客志向を混同する」という罠である。これにはまると、「顧客は王様である」という考え方を叩き込まれたマネジャーは、既存顧客を満足させようとする。しかし、この手法で新規市場を創造できる可能性は小さい。
例えば、ソニーは2006年、書籍関連の市場を開拓しようと、電子書籍リーダー「PRS」を発売した。それは既存顧客の「製品が大きくディスプレーの品質が低い」という不満を解消する商品として登場し、高い顧客満足度を得た。にもかかわらず、アマゾンのキンドルに敗れた。なぜか?
非顧客層が電子書籍リーダーを利用しない主な理由は、製品の質よりも、「品揃えの乏しさ」にあったからだ。アマゾンはこれを踏まえ、キンドルの投入時にPRSの4倍超もの電子書籍を用意した。すると非顧客層も飛びつき、市場は拡大した。
編集部のコメント
同じ市場で、同じような商品でライバルと競う限り、行き着く先は“消耗戦”。そうした血みどろの戦いが行われる既存の市場=「レッド・オーシャン(赤い海)」ではなく、未開拓の市場=「ブルー・オーシャン(青い海)」を創造すべきである ―― 。
このように主張し、未開拓の市場を生み出すための具体的手法を解説した『ブルー・オーシャン戦略 競争のない世界を創造する』(W・チャン・キム、レネ・モボルニュ 著/ダイヤモンド社)は世界的に話題を呼び、44カ国語で出版され、全世界で360万部を売り上げるビジネス書となりました。
このブルー・オーシャン戦略の理論、フレームワーク、ツールが最初に世に出たのは、『ハーバード・ビジネス・レビュー(HBR)』誌上でした。著者のW・チャン・キムとレネ・モボルニュは1997年に初めて論文が掲載されて以来、定期的にHBRに論文を寄稿していたそうです。
本書は、そうしてHBRに掲載された2人の論文10本を集めたものです。ブルー・オーシャン戦略の原点となる論文から、『ブルー・オーシャン戦略』刊行後に寄稿したものまで、重要論文を時系列に収録しています。ちなみに、上掲の言葉は、2015年に掲載された論文『レッド・オーシャンの罠』の中で登場します。
『ブルー・オーシャン戦略論文集』は、ブルー・オーシャンの理論を正しく、そしてより深く理解する上で参考になる本です。『ブルー・オーシャン戦略』を既に読んだ人も、あるいはまだお読みでない方にも、学ぶべき点が多い1冊といえるでしょう。




