会議の理想は、「必要に応じてさっと集まり、立ち話でさっと打ち合わせをすませてしまうこと」 ―― これに尽きる。
解説
サラリーマンは、全労働時間の約3割を会議に費やしているといわれる。となれば、中身のないダラダラした会議などは、人と時間とお金のムダ使い以外の何ものでもない。
そこで著者の酒巻久氏が社長を務めていたキヤノン電子では、会議の時間短縮と活性化を目指して、会議を立ったままで行うようにした。そのために、全ての会議室から椅子を撤去し、テーブルの脚に約30cmの「ゲタ」を履かせ、立って使うのにちょうどいい高さにした。さらに、会議の効率化と創造性の発揮のために、2つの仕掛けを施した。
1つは、「自分の意思のない意見は厳禁」というルールを作ったことである。具体的には「~だろう」「~と担当者が言っています」などの表現を禁じた。これらの曖昧で無責任な表現を許すと、その発言に対する責任もいい加減なものになる。
もう1つは、資料の持ち込みと配布を禁止したことである。手元に資料があると、どうしてもそれを目で追い、ただ棒読みするだけになってしまう。そこで、必要な資料はスクリーンに投影し、それを見ながら会議を進めるようにした。
こうした取り組みの結果、それまで延べ16時間もかかっていた経営会議が、わずか4~6時間で終わるようになったという。
編集部のコメント
売上が伸びない時代でも、組織の体質改善で利益は10倍にできる ―― そう主張するのが、本書の著者でキヤノン電子社長を務めた酒巻久氏です。
酒巻氏は、同社を実質赤字から利益10倍へ、わずか6年で導いた立役者。その大胆な経営改革をまとめたビジネス書が、『椅子とパソコンをなくせば会社は伸びる!』です。
本書の特徴は、会社に潜む“ムダ”を容赦なくあぶり出し、利益体質へと変革するノウハウを惜しみなく公開している点。その象徴が「椅子とパソコンをなくす」です。
酒巻氏は、すべての会議室から「椅子」をなくすことで、上掲の一節のように会議のムダを削ることができ、仕事の効率を高めることができるといいます。
また、「パソコン」は使い方1つで“怠惰の隠れ蓑”になると指摘。業務中にパソコンで遊ぶ社員や、隣席の同僚にまで長々とメールを送る社員など、会社の生産性を脅かす実例を示しつつ、デジタル時代のパソコンとうまく付き合うルール作りの必要性を説きます。
こうしたムダを徹底的にそぎ落とす“垢すり”を行った上で、酒巻氏は社員の「自主性」を育てる仕組みづくりや、会社を伸ばすリーダーの資質についても語ります。
利益を飛躍的に伸ばす方法を学びたいビジネスパーソンにとって、この本は格好の指南書といえるでしょう。ビジネス書の中でも実践的かつ刺激的な内容で、停滞する組織を変えたい人におすすめの1冊です。