〈 ピーターの法則 〉
階層社会では、すべての人は昇進を重ね、おのおのの無能レベルに到達する。
解説
組織と名のつくところには、必ずといっていいほど、怠け者や仕事のできない人間がごろごろしている。
なぜ、無能な人間がはびこっているのか?
教育学者のローレンス・J・ピーター氏らは、そうした無能な人間たちの事例を分析した結果、1つの結論にたどり着いた。それが、上記の「ピーターの法則」である。
ここでいう階層社会とは、身分や等級、階級に従って構成員の配置が決まる組織のことである。
この階層社会 ―― ビジネス界、政界、官公庁、教育界といった世界で働く人は、誰一人として、ピーターの法則の支配から逃れられない。
有能だと認められて昇進し、次のレベルでも有能でいられるケースもある。しかし、新しい地位で有能と認められるということは、さらに次の昇進が待っているということだ。
つまり、すべての個人にとって、最後の最後の昇進は、有能レベルから無能レベルへの昇進となる。
すべての個人は、その人なりの無能レベルに行きつくまで昇進し、その後はそこに留まり続けるのである。そして、組織は次のような帰結を迎える。
「やがて、あらゆるポストは、職責を果たせない無能な人間によって占められる」
これを、「ピーターの必然」という。
編集部のコメント
なぜ組織に無能がはびこるのか。『ピーターの法則 創造的無能のすすめ』は、そのメカニズムを解き明かした本です。組織人の宿命ともいえる無能化の法則を提示するとともに、ビジネスパーソンがこの法則から逃れるための、「創造的無能」というテクニックについても紹介しています。
将来の成功を掴むための方法を説くビジネス書が数多くある中で、将来は誰しも無能になると明言し、そこから逃れる術を説いた本書は異色の存在といえるでしょう。
『ピーターの法則』の原著は1969年に、その邦訳は1970年に出版されています。『TOPPOINT』で紹介しているものは、最初の邦訳の刊行から33年経った2003年刊の新訳版です。
この新訳版刊行から約20年、原著出版からも半世紀が経とうとしています。にもかかわらず、本書がロングセラーとして長く読み継がれているのは、あらゆる組織において、いまだに「ピーターの法則」が有効であることを示しているのではないでしょうか。
著者の1人、ローレンス・J・ピーター氏は教育学博士。教師やスクールカウンセラー、刑務官指導員、コンサルタント、大学教授といった、幅広い経験の持ち主です。
もう1人の著者であるレイモンド・ハル氏は作家です。ハル氏とピーター氏との関係については、本書の「はしがき」で触れられています。
それによると、世の中に無能な人間があふれている状況にうんざりしていたハル氏は、ある時、無能の研究に打ち込むピーター氏と出会い、彼の持論を聞く機会を得ます。その内容はまさに、「なぜ無能がはびこるのか」というハル氏の疑問に答えてくれるものでした。そこで、ハル氏が研究の公開を促したところ、ピーター氏は同意。ピーター氏が集めた膨大なデータと原稿をハル氏が編集し、1冊の本に仕上げた、というわけです。
ユーモアあふれる語り口ながら、階層組織の弱点を鋭く突いた、『ピーターの法則』。組織を統括するトップマネジメント層から、一担当者まで、あらゆるビジネスパーソンの方々にぜひ読んでいただきたい、「階層社会学」の名著です。