ランダム・ウォークというのは、「物事の過去の動きからは、将来の動きや方向を予測することは不可能である」ということを意味する言葉である。
これを株式市場に当てはめると、株価が短期的にどの方向に変化するかを予測するのは、難しいということだ。言い換えれば、専門の投資顧問サービスや証券アナリストの収益予想、複雑なチャートのパターン分析などを用いても、無駄だということである。
解説
一般の投資家は、ウォール街のプロには太刀打ちできないと言われている。複雑なデリバティブ商品や、コンピュータを使ったトレーディング手法を駆使する専門家たちには勝てない、と。
しかし、事実は逆だ。個人投資家は専門家と同じか、時にはそれを上回る、優れた運用成果を上げることもできる。その根拠となるのが、上掲の「ランダム・ウォーク理論」である。
実際のところ、投資のプロの能力はどれほどのものか。それを知るには、証券アナリストたちの中でも最も優秀な人々が運用に関わっている、投資信託のパフォーマンスを調べるとよい。
例えば、2017年末までの25年間の、典型的な大型株投信の運用成績と、市場平均を示すベンチマークとしてS&P500平均を年率で比べると、次のようになる。
- ・S&P500平均 9.69%
- ・株式投資信託平均 8.55%
平均的な投資信託のパフォーマンスは、広く分散投資されたインデックス・ファンドのパフォーマンスを上回ることができていない。すなわち、プロの運用成績は、私たちが支払っている手数料に値しないという結論になる。
編集部のコメント
2024年から始まった新NISA制度や、株価の上昇を背景に、個人投資家は増加傾向にあります。これから投資を始める方はもちろん、既に運用を行っている個人投資家にもおすすめなのが、本書『ウォール街のランダム・ウォーカー(原著第12版)』です。
1973年の初版以来、販売部数は全米累計200万部超。半世紀にわたりアップデートを重ねてきた、まさに“投資のバイブル”と呼ぶにふさわしいロングセラーです。改訂第12版では、仮想通貨やリタイア世代の投資方針など、時代に即した項目が追加されました。
著者はプリンストン大学名誉教授のバートン・マルキール氏。氏が一貫して主張するのは、「個人投資家にとってはインデックス・ファンドへの投資がベスト」というシンプルかつ強力なメッセージです。
本書では、なぜ他の投資方法がインデックス投資に比べて劣るのかを、膨大なデータに基づいて論理的に解説しています。
内容は専門的ながら、数式は最小限に抑え、グラフや表が豊富で、初心者でもスムーズに読み進められます。さらに、株価のチャートを分析する「テクニカル分析」の問題点や、オランダのチューリップ・バブルからビットコイン・バブルまでのバブルの歴史など、読み物としても面白いところも本書の魅力です。
なお、TOPPOINTライブラリーでは、マルキール氏が貯蓄と投資の基本を簡潔に説いた『投資の大原則 [第2版] 人生を豊かにするためのヒント』(チャールズ・エリス氏との共著)の要約も収録しています。併せて読むことで、投資の本質がより深く理解できるでしょう。