米国の心理学者の研究では、「幸福度の高い従業員は、そうでない従業員に比べ生産性は30%、営業成績は37%、創造性に至っては3倍も高くなる」という結果が出た。「幸せ」を感じながらの行動は、脳内の神経伝達物質ドーパミンが分泌され、やる気や学習能力が高まるからだという。
解説
欧米では今、生産性向上を図るための企業単位の新しい試みが広がっている。いわば、現場目線の「働き方改革」だ。
代表的なのは、社員の幸せを第一とする環境づくりを考え、実践する「CHO(チーフ・ハピネス・オフィサー)」という役職を設置するものだ。社員の幸福度が高い職場ではモチベーションが上がり、生産性や会社への定着率が上がる。
このCHOを最初に採用したとされるのは、米グーグル社である。同社では、数百あるチームの生産性の高低差が大きく、いかに各チームを高いレベルで揃えるかが課題だった。そこで、徹底的に社員の行動を調べたところ、行き着いたのは、「生産性を高めるカギはチームワーク。1人1人が他者への思いやりや共感をもてば、幸せに働くことができ、成功につながる」ということだった。
例えば、会議で特定の人が多く話すのではなく、全員が均等に話すようにする。各々の発言を尊重すれば、チームワークが良くなるという。
また、フランスの保険会社では、女性CHOが100人の社員1人1人と週に一度コミュニケーションを取り、ストレス軽減のアドバイス、個人的な悩みの相談などを受け付けている。これを続けるうちに、顧客へのサービスが改善し、欠勤率が下がるといった効果が確認された。
幸せを物差しとした働き方が、結果的に会社にとっても最善だという欧米の例は示唆に富む。