2021.10.19

〈 諸葛孔明の人物鑑定基準 〉

  • ①1つの問題について善悪の判断を求め、その志がどこにあるかを観察する
  • ②言葉でやりこめてみて、相手の態度がどう変化するかを観察する
  • ③計略について意見を求め、どの程度の知識をもっているかを観察する
  • ④困難な事態に対処せしめて、その勇気を観察する
  • ⑤酒に酔わせてみて、その本性を観察する
  • ⑥利益でつってみて、その清廉潔白の加減を観察する
  • ⑦仕事を与えてみて、命じた通りにこなしたかどうかによって、その信頼度を観察する

解説

 『三国志』の中で、「泣いて馬謖を斬る」の故事となった馬謖は、才能に溢れた人物だった。
 だが、才気煥発の者は、時に己の才にまかせて突っ走るために、下手をすると、それが命取りになりかねない。
 この馬謖を、「戦の神様」といわれた諸葛孔明が重用した。孔明は、大国・魏との戦いにおいて、馬謖を蜀の主力軍の司令官に任命し、「渭水のほとりに陣を構えよ」と指示した。
 だが、馬謖はそれに逆らった。「渭水に布陣して勝っても、戦功は孔明に帰せられる。自分の戦略で勝てば、戦功はすべて我がものになる」と考えたのだ。そして、馬謖は山上に陣を敷いた。
 だがその結果、魏軍に四方から山頂に攻めのぼられ、惨憺たる敗北を喫した。後日、孔明は命令に背いた馬謖を泣いて斬ったと伝えられる。
 孔明が何よりも悔しかったのは、自著『将苑』の中に「人を見る明」の項目を設けたほど、人物の洞察には自信があったのに、その判断を誤ったことだった。馬謖の才気に惑わされて起用したのが間違いであったと、孔明は自らを責めた。
 この『将苑』に書かれている孔明の人物鑑定法が、上記の7項目である。

編集部のコメント

 他人を惹きつける人と、そうでない人。その違いはどこにあるのか?
 この疑問に対する答えを明らかにしようとした書が、『人間的魅力の研究』です。

 著者は、評論家の伊藤肇(はじめ)氏。1926年生まれで、第二次世界大戦末期には旧満州国立建国大学に在学していました。中国古典への造詣が深かった氏は、戦前の財界人と親交を結び、漢籍の素養ある知識人の畏敬を受けていたそうです。その主な著書に『現代の帝王学』『新装版 左遷の哲学 「嵐の中でも時間はたつ」』などがあります。

 伊藤氏は「人間的魅力」を探るにあたり、中国明代の碩学・呂新吾が著した『呻吟語』を参考にします。『呻吟語』は人の生き方、在り方を説き、読み継がれてきた古典です。
 呂新吾はこの書で、人の魅力を次の3つに分類しています。
①深沈厚重(私心が全くない人。民衆を幸せにする人物) 
②磊落豪雄(小さなことにこだわらない、実行力のある人)
③聡明才弁(秀才で弁舌さわやかな人)
 伊藤氏はこれら3分類についてそれぞれ解説するとともに、西郷隆盛や福沢諭吉、瀬島龍三(伊藤忠商事元会長)や土光敏夫(東芝元会長)など、古今の人物のエピソードを交えながら、「人間的魅力」とは何かを追究していきます。

 1980年に初版が刊行された『人間的魅力の研究』(文庫版は2000年発行)は、とりわけ経営者の間で愛読され、読み継がれてきたロングセラーです。自身の魅力を高める上でも参考になる、人物論の名著といえるでしょう。

2016年2月号掲載

人間的魅力の研究

他者を惹きつける人と、そうでない人の差とは? 『呻吟語』の著者・呂新吾による魅力の3分類 ――「深沈厚重」(私心が全くない人)、「磊落豪雄」(些事に拘泥しない、実行力のある人)、「聡明才弁」(秀才で弁舌さわやかな人)を軸に、「人間的魅力」を追究した。西郷隆盛、土光敏夫など、随所に引かれるエピソードも興味深い。

著 者:伊藤 肇 出版社:日本経済新聞出版社(日経ビジネス人文庫) 発行日:2000年11月

新刊ビジネス書の
要約を紹介する月刊誌
『TOPPOINT』
本誌を
サンプルとして無料
お送りいたします。

  • book01

    熟読

    毎月大量に発行される新刊ビジネス書や、文化、教養に関する新刊書などを、100冊前後吟味します。

  • book02

    厳選

    熟読した本の中から特に「切り口や内容が新鮮なもの」「新たな智恵やヒントが豊富なもの」10冊を厳選します。

  • book03

    要約

    読者の方が、本を購入される際の「判断基準」となるよう、原著の内容を正確に、わかりやすく要約します。

購読者の約7割が、経営者および
マネジメント層の方々。
購読者数は1万人以上!
その大半の方が、6年以上ご愛読。

まずは、1冊無料試読
TOPPOINT編集部厳選「必須のビジネス名著100選 2023年選書版 オールタイムベスト10ジャンル×10冊」を1部無料謹呈! TOPPOINT編集部厳選「必須のビジネス名著100選 2023年選書版 オールタイムベスト10ジャンル×10冊」を1部無料謹呈!