2022.12.02

 9万7000人余りの顧客の回答を分析してわかったのは、「期待以上のサービス」を受けた顧客と「期待が満たされただけの顧客」のロイヤルティには、事実上差がまったくないということだ。

解説

 経営幹部は、「顧客の期待を超えるサービス」を提供することが、顧客ロイヤルティを高めると信じている。
 しかし10万人近い顧客の声を聞いた結果、上記のような事実が明らかになった。
 重要なポイントは2つある。
 まず、企業は「単に顧客の期待を満たすことのメリットを過小評価する傾向」がある。実は、顧客はただ約束されたものが手に入れば、それで満足するのである。
 次に、企業は「顧客の期待を上回るサービスから得られるロイヤルティを過大評価する傾向」がある。だが、期待を超えるために様々なリソースや予算を投入しても、それに見合った経済的な利益は得られない。顧客を「感動させる」ことが、ロイヤルティ向上にはつながらないということだ。
 では、これらの事実は何を物語っているのか。
 何か問題が起きた時、顧客の心を支配しているのは、「解決に力を貸してほしいという感情」だということ。感動させる必要などないから、とにかく問題を解決してほしいのだ。

編集部のコメント

 感動的な顧客サービスは、顧客ロイヤリティを上げていくことには関係がなく、ある程度の顧客サービスを行っていれば、顧客ロイヤリティは一定に保たれる ―― 。
 『おもてなし幻想 デジタル時代の顧客満足と収益の関係』は、企業にとって意外と思われるこうした事実を明らかにします。「おもてなし」から進化した、これからの顧客サービスへの指針を示したビジネス書です。

 著者の3名は、いずれも会員制の大手顧問企業CEBのディレクター。その1人、マシュー・ディクソンは、著書『チャレンジャー・セールス・モデル』が『ウォール・ストリート・ジャーナル』紙のベストセラーにもなった人物です。

 本書の特色は何といっても、CEBが実施した大規模な調査をもとにしている点でしょう。著者たちが所属するCEBは、自社が運営する組織のネットワークを通じて、顧客9万7176人にカスタマーサービスの対応経験に関する調査を行いました。そこから導き出された結論、顧客と長く付き合っていくために必要なサービス・サポートのあり方について、多くのデータを交えて解説しています。
 また本書は、調査結果を様々な観点から分析した図版を60点以上も掲載しています。図版1点1点がもつ情報価値の高さは、日本語版監修者の1人である神田昌典氏が「監修者 まえがき」で言及するほどです。

 では、大規模な調査の結果を踏まえて、企業は今後どのような顧客サービスを行っていけばよいのでしょうか。そのカギは「顧客に努力をさせない」ことにある、と本書は説きます。
 経営者層のみならず、マーケターや営業に関わるビジネスパーソンにも読んでいただきたい1冊です。

2018年9月号掲載

おもてなし幻想 デジタル時代の顧客満足と収益の関係

感動的なサービスを提供して、顧客ロイヤルティを高める ―― 。多くの企業が取り組む「おもてなし」は、割に合わない! 本書はその根拠を、約10万人を対象に行った調査結果を基に示し、行き過ぎたサービスはロイヤルティを損なうと説く。では、企業はどうすればいいのか? カギは、「顧客に手間をかけさせないこと」だ。

著 者:マシュー・ディクソン、ニック・トーマン、リック・デリシ、神田昌典(監修)、リブ・コンサルティング(監修) 出版社:実業之日本社 発行日:2018年7月

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