(日本マクドナルドでは、)アンケート調査で「サラダを置いてほしい」「ヘルシーなメニューを食べたい」といった声が寄せられていたため、その意見を参考にした新商品「サラダマック」が2006年に導入されました。しかし、それだけ「お客さまの意見」として求められているはずなのに実際には売上が伸びず、ほどなく商品は撤退します。
この後、今度はハンバーガーの肉の量を大幅に増やした「メガマック」「クォーターパウンダー」といった商品を発売、これが大ヒットしました。顧客が求めていたのは、実は「ヘルシー」とは正反対の商品だったのです。
解説
この事例から何がわかるのか? 推測すれば、マクドナルドに対する消費者の「インサイト」が、実は「食べ応えのあるハンバーガーを見ると、ガブッとかぶりつきたくなる」だったといえる。
インサイトとは、人を動かす隠れた心理のこと。「欲しい」と思う気持ちは、実は隠れている。この「隠れた心理」、消費者が普段、意識していない心理に着目すれば、顧客を動かすことができる。
アンケートで「ヘルシーなものを」と答えるのは、人々が健康を意識しているからだ。だが、ハンバーガーを食べた経験のある人なら、肉のおいしさを覚えている。それは健康という建前的な意識が覆い隠す、「肉を食べる快感」という欲求を刺激する。これがメガマックの成功の理由なのだ。
編集部のコメント
人は、何を「欲しい」と思っているのでしょうか。必要なモノ・サービスがほぼ行き渡り、ニーズが満たされた今日、「欲しい」は簡単には見えてきません。
市場が成熟し、どんなものでも「だいたい、良いんじゃないですか?」と思える今の時代。そんな環境下で、人々の欲求を読み解き、ヒットを生み出すには、どうすればいいのでしょうか。
この問いに答えるカギとなるのが、人を動かす隠れた心理「インサイト」です。本人すら気づいていない欲求を見つけて、的確に刺激する。それができれば、ヒットに結びつけることも可能になるでしょう。
『「欲しい」の本質 人を動かす隠れた心理「インサイト」の見つけ方』は、このインサイトという“武器”を身につけ、使いこなす方法を紹介する本です。
著者の大松孝弘氏と波田浩之氏は、過去15年間で、インサイトを扱う600件以上のプロジェクトに携わってきました。本書には、そうした経験の中で培われたフレームワーク、メソッドが体系的にまとめられています。
インサイトの概念をわかりやすく示した図表や、「お茶漬けのり」「キットカット」など身近なインサイトの活用事例も豊富に紹介。その方法論は、マーケティングや商品開発、事業開発に携わる人がアイデアを形にし、ヒットを生み出す手がかりを与えてくれるでしょう。