〈 ファンの支持を強くするための3カ条 〉
- ・その価値自体を、アップさせること
- ・その価値を、他に代えがたいものにすること
- ・その価値の提供元の評価・評判を、アップさせること
解説
企業やブランドが大切にしている「価値」を支持する「ファン」を大切にし、彼らをベース(土台)にして、中長期的に売上や価値を上げていく。こうした考え方を「ファンベース」という。
このファンベースの施策で間違えがちなのは、「全員にファンになってもらいたい」と望むこと。皆に愛されたいのはわかるが、それは無理だ。ファンは少数で、全体の20%ほどしかいない。
では、その少数に好かれるにはどうすればいいのか。上記の3カ条の通り、「大切にしている価値」に対する彼らの支持を強くすることだ。
例えば、あなたがカフェを経営し、「我が家みたいにくつろげる」という価値を大切にしているとする。
この価値に共感して通ってくれる常連さんの支持を強くするには、「我が家みたいにくつろげる」という価値自体を高める必要がある。常連さんの意見をもとに改善を加え、より喜ばせる。こうして、彼らの「共感」を強くするのである。
次に、その価値をあなたの店だけの特別な体験に変える。それには、他の店じゃダメと思ってもらう必要がある。すなわち、「愛着」を強くする。
最後に、その価値を提供しているあなた自身の評判を上げないといけない。評価や評判は一朝一夕には高められない。日々の行動や努力で積み重ねた「信頼」が必要だ。
つまり、ファンベースのカギは、共感・愛着・信頼の3つを地道に強化していくことである。
編集部のコメント
少子高齢化や市場の成熟、情報過多…。こうした要因により、新規顧客の獲得が難しくなっている現代。こうした時代に新たな消費行動を促すための解決法として、「ファンベース」 ―― 自社の商品やブランドのファンをベース(土台)にして、中長期的に売上や価値を上げる ―― という考え方を提案するのが、本書『ファンベース 支持され、愛され、長く売れ続けるために』です。
なぜ、ファンベースの考え方が重要なのか? 具体策にはどのようなものがあるのか? その基本的な考え方やアプローチの仕方について、豊富なデータや事例を挙げて解説しています。
著者は30年以上、広告コミュニケーション業界で活躍する佐藤尚之氏。電通でマス広告やネット広告、コミュニケーション・デザインなどに携わったあと、2011年に独立。今はコミュニケーション・ディレクターとして活躍する人物です。
企業は広告や販促イベントなどの施策を打つことによって、ブランドや商品が売れる状況をつくることはできるかもしれないが、それは一時的なものにすぎない。ファンベースのアプローチを用いれば、ブランドや商品を「長く安定して売れ続ける」状態にすることができる、と本書は説きます。
なお、ファンベースによって成功した企業事例としては、カルビーやカゴメ、広島東洋カープなどの取り組みが紹介されています。
企業のマーケティング担当者、広報担当者のみならず、管理職や経営部門、管理部門などあらゆるビジネスパーソンにとって、ファンベースの考え方を身に付けておくことは役に立つはずです。一読をお薦めしたいビジネス書です。