2025年には、世界人口のおよそ3分の2がアジアに暮らしているだろう。対照的にアメリカは世界人口の約5%、EUは約7%を占める程度だ。
解説
大航海時代から20世紀中頃までの数世紀の間、欧米諸国は経済力を基盤に世界を支配していた。
ところが、過去50年の間にその勢いは衰え、アジア各国が台頭してきた。
アジアの経済発展はまず1960年代に日本で始まり、70年代に韓国、台湾、東南アジア諸国の一部に波及する。80年以降は中国経済が2桁成長を始め、インドも90年代以降、成長を遂げた。
そして2014年、国際通貨基金(IMF)は、中国が世界最大の経済国になったと発表した。IMFによれば、今日の世界4大経済国のうち3カ国がアジアの国だという。1位が中国、2位がアメリカ、3位がインド、4位が日本である。
フィナンシャル・タイムズ紙のギデオン・ラックマン氏は、こうした欧米からアジアへのパワーシフト ―― 「イースタニゼーション」(東洋化) ―― が起こっている理由は、「人口の多さ」にあると指摘する。上記のように、近い将来、世界人口の約3分の2はアジアで暮らしている。
数世紀にわたり、西洋と東洋の間には富と技術に関して大きな差があった。そのため西側諸国は、人口の差を問題にすることなく、国際情勢とビジネスを支配できた。
しかし、過去数十年にわたるアジアの急激な経済発展は、数で勝るアジアに世界のパワーバランスが傾くほどに、富の格差を縮めたのだ。
編集部のコメント
これまで欧米中心に形成されてきた、世界の政治や経済。しかし近年、中国やインドを中心としたアジア諸国の成長により、そのパワーバランスが崩れつつあります。
『イースタニゼーション 台頭するアジア、衰退するアメリカ』は、フィナンシャル・タイムズ紙の外交関係チーフ・コメンテーターであるギデオン・ラックマン氏が、こうした“東洋化”の動きについて解説した本です。
巨大な発展途上国だった中国は、鄧小平の改革開放政策を経て、アメリカに対抗し得る「大国」へと成長。さらに中国に続いて、インドも強国として名乗りをあげています。
この二大国をはじめとするアジア諸国が台頭する一方で、欧米諸国は経済低迷にあえぎ、政治面ではポピュリズムに悩まされています。
世界に大きな影響を及ぼしつつある、西から東への巨大なパワーシフト。著者は、圧倒的な取材力で、西欧中心だった世界秩序に綻びが生じている状況を描き出します。
本書を読むと、アメリカなどの欧米先進国、すなわち旧来秩序とともに成長してきた日本は、こうした現状を踏まえた上で何をすべきなのか。その役割についても考えさせられます。
21世紀における国際秩序の課題を示した『イースタニゼーション』は、ビジネスパーソンにとって国際理解を深めるために役立つ1冊です。