人は何もしないでぼーっとしている時、ユニークなアイディアや問題を解決する方法を思いつきます。創造性の定義にはいろいろあるけど、脳内でまったく新しい結びつきが生まれることだとすれば、それにはちょっとした助けが必要で、あなたが退屈することこそが絶好のきっかけになるんです。未来学者のリタ・キングはこれを「創造のための退屈」と名づけています。
解説
何かを創造する時、私たちは「退屈」する必要がある。認知神経科学者のジョナサン・スモールウッド博士は言う。「独創性や創造力と、ぼーっとしている時にふと浮かぶ発想は、非常に深いところで密接につながっている」。
私たちは意識的に何かをしている時、注意力を制御する「実行注意ネットワーク」という脳の部位を使っている。
これに対し、ぼんやりして心がさまよっている時は、「デフォルトモード・ネットワーク」という部位が活発に働く。デフォルトモードは、脳が明確な目的のある作業に集中していない状態のこと。つまり、ぼんやりしているからといって、頭のスイッチが切れているわけではない。
スモールウッド博士は、ぼんやりすることは人間にとってきわめて重要で、それは「人間とその他の動物を分ける決定的な要素」だと言う。
編集部のコメント
いまや私たちの生活になくてはならないものとなった「スマホ」。メールの返信、ツイッターの更新、ニュースアプリのチェック…。私たちは暇さえあれば端末をいじり、時間を潰しています。
ですが、そのせいで集中力や創造力が失われているとしたら?
『退屈すれば脳はひらめく 7つのステップでスマホを手放す』は、スマホをはじめとするモバイル機器が人の脳に与える影響などを、興味深い実験・研究を紹介しつつ述べ、「退屈する」ことの大切さを説いた本です。
著者のマヌーシュ・ゾモロディは、ニューヨーク公共ラジオ局の編集ディレクターです。
2015年2月、彼女はホストを務める番組で、1週間にわたるプロジェクトを企画しました。タイトルは「退屈すれば脳はひらめく」(本書のタイトルと同じです)。毎日1つずつレッスンをこなしてスマホを手放し、創造性を取り戻そうという取り組みです。
「スマホを手放す」ことと「創造性」を関連づけたこのプロジェクト、きっかけは著者自身の経験にあったようです。出産後、退屈な時間を過ごしていた時に、ボーっとしているとユニークなアイディアが浮かぶことに気づいたというのです。
退屈しないとクリエイティブにはなれない。けれど、今の世の中はスマホをはじめとするデジタル機器のせいで退屈する時間がほとんどない。だから、テクノロジーを手放して退屈を受け入れ、ひらめきを手に入れよう――。
そうした発想から生まれたこのプロジェクトには、2万人以上のリスナーが参加し、大反響を呼びました。そして、そのプログラムをさらに進化させて生まれたのが本書、『退屈すれば脳はひらめく』です。当時のメニューが練り直され、退屈することに秘められたメリットを生かして、自分自身の才能を引き出せるように、7つのレッスンが用意されています。
退屈する能力を高めるレッスンを1つずつこなすことは、デジタル機器との接し方を見直す助けになるでしょう。精神的にもっとゆとりをもちたい、生産性と創造性を高めたいと願う人にとって、参考になる1冊です。