人は困難な時期があるからこそ、より大きな喜びを感じられるようになるということを忘れてはなりません。困難こそが、人生におけるすべての喜びへの感謝の気持ちをつくり、この感謝の気持ちこそが、真の生きがいや喜びの源になるのです。
解説
私たちの社会は、「幸せでなければならない」という思い込みにとらわれている、と批評されることがある。
事実、その場しのぎの問題解決法や、苦痛のない人生のための自己啓発本がよく売れている。その意味では、こうした批評は当たっている。
しかし正確に言うと、人々がとらわれている思い込みは、「幸せでなければならない」というよりも、「楽しさが全て」というものだ。
真に幸福になるには、こうした自己啓発本などが回避しようとする不快な感情や辛い体験が必要だ。人は、困難を克服することで幸せになれる。
精神科医ヴィクトール・フランクルは言う。
「人間が本当に必要としているのは不安のない状態ではなく、価値ある目標のために努力することである。人間に必要なのは何としてでも不安を取り除くことではなく、意義の達成に使命を感じることである」
編集部のコメント
よい生き方とは、どのような生き方か?
こうした問いと向き合い、答えを探る学問に「ポジティブ心理学」というものがあります。そして、ポジティブ心理学の理論を日常生活に取り入れるための「ガイドブック」といえる本が、『ハーバードの人生を変える授業』です。
2010年の刊行後、約4年で13万部突破のベストセラーとなり、2015年には文庫版が刊行されました。TOPPOINTでは、この文庫版を紹介しています。
ポジティブ心理学の研究範囲は広く、楽観性からレジリエンス、幸福、ポジティブな組織開発まで多岐にわたります。その中で、著者のタル・ベン・シャハー氏は「幸せ」研究の第一人者として知られています。ある年には、シャハー氏がハーバード大学で受け持つ授業を受講したいと、約1400人(ハーバード大学全学生の約2割)もの学生が殺到。同大学でその年の一番人気となった氏の講義は、多くの学生の人生を変えた「伝説の授業」と評されています。
本書は、その授業のエッセンスを52講にまとめ、理論とアクションプランを提示したものです。「毎日、感謝できることを書く」「生活を簡素化し、テンポを遅くする」といった、幸せになるための考え方、行動について、心理学の知見を交えながら易しく紹介しています。
「難解な言葉で語られることの多い学術的研究を、一般の人がわかりやすいかたちで提供し、人々が日々の暮らしの中でそれを役立てていけるようにすること」
本書の訳者の成瀬まゆみ氏は「訳者あとがき」において、シャハー氏の活動の一番の目的を、上記のように解説しています。この言葉はそのまま、本書の特色を言い表したものといえます。
どうすれば自分は幸せになれるのか…。そんな悩みを抱える方に、ぜひ読んでほしい1冊です。