世の中では、失敗を見る時、「原因」と「結果」だけを見て、失敗の原因を捉えようとする。それでは、的確に原因を分析するには不十分である。
失敗体験を、次に利用できるように分析するためには、原因を「特性」と「要因」とに分けて考えることが不可欠である。
解説
失敗を繰り返さないためには、失敗から学ぶ必要がある。その際、非常に重要なのは、失敗原因の捉え方である。
失敗学の権威、畑村洋太郎氏が述べるように、そのカギは、失敗の原因を「特性」と「要因」に分けて考えることである。
特性とは、企業体のような、あるシステムが持っている「失敗を起こす特性」である。その特性に対して、何らかの要因が働くから「結果」が生じる。そう考えると、失敗の意味が明確に見えてくる。
例えば、雪印乳業の食中毒事件の場合、まず「特性」として同社の企業体質があった。それは、「儲け優先でどんなことでもやる」「自分に都合の悪いことは見ない」というものだった。
この特性に対して、「牛乳が安くてあまり儲からない」という要因があった。そのため、一度出荷された牛乳が戻ってきた時に、「検査もせずに再利用する」「毒素の入った材料を平気で出荷する」といった結果を引き起こしたのだ。
そう考えると、システムが持つ特性が変わらない限り、同種の要因があれば失敗は繰り返される、ということがわかる。
このように、失敗原因の特性と要因が把握できると、「どのような結果を生じるのか」ということが推測できるようになる。
ただし、失敗の結果は目に見えるが、特性や要因は目に見えない。そこで、結果から特性や要因を逆演算して推定していくことが必要になる。
組織としてこうした失敗原因の捉え方ができると、同じ失敗を繰り返すことはなくなっていく。これが「強い会社」を作っていくプロセスである。
編集部のコメント
『起業と倒産の失敗学』は、ベンチャービジネスの失敗をテーマにした本です。急成長したベンチャー企業が、なぜつまずいたのか。失敗における人的要因を10に大別し、各要因につき1例ずつ、計10例の企業事例を取り上げ、失敗の本質を分析しています。
著者の畑村洋太郎氏は、「失敗学」の権威。もともと技術・設計分野で失敗学を研究していましたが、本書ではその知見を経営のジャンルに当てはめています。
氏が本書を書くに至った経緯は、本書の「はじめに」で触れられています。
日本を活性化させる上でカギとなるのは、新しいビジネスが登場すること。しかし、ベンチャービジネスは経営基盤が脆弱なことが多く、挫折するケースも少なくありません。
そうしたベンチャーが失敗から学んで再起をする、あるいは他社の失敗を糧に成長を遂げる強い企業が次々に生まれる。そうなれば、日本経済は活力を増し、さらに社会風土もチャレンジ精神にあふれたものになる――そうした願いの下、多くの起業を志す人の一助となるよう、この『起業と倒産の失敗学』が執筆されました。
本書のもとになったのは、2003年に日本実業出版社から出版された『強い会社をつくる失敗学』です。この本が、2006年に文藝春秋から、一部加筆のうえ『起業と倒産の失敗学』という新タイトルで文庫化されました。TOPPOINTライブラリーでは、この文庫版の要約をご紹介しています。
多くの人は成功した企業ばかりに注目し、その成功の法則に学ぼうとします。そんな中で、「失敗」の事例に着目し、同じ失敗を繰り返さないための教訓を導き出す。そこが本書の特色であり、その内容は、刊行から時が経った今もなお、色褪せていません。




