「5+5はいくつですか?」。この問いの答えはひとつしかありません。
でも、「何と何を足せば10になりますか?」。この問いの答えは無限です。マイナスでもいいし、小数だっていいのです。
どちらも単純な足し算の問題ですが、問いの立て方 ―― つまり、フレームが違っています。
解説
スタンフォード大学で教鞭を執るティナ・シーリグは、創造性を高める1つの方法は「リフレーミングで視点を変える」ことだと言う。
問いというのはすべてフレームであり、答えはその枠の中に収まる。そして、問いの立て方を変えることで、答えの幅はがらりと変わる。
私たちは日々の生活の中で、何を見て、何を聞き、どんな経験をするのか、そのフレームを自分自身で作っている。フレームによって、考え方は豊かにもなれば貧弱にもなる。
私たちは普段、フレームのことなど気にも留めない。だが、問いの立て方を学び、フレームを変えられるようになることこそが想像力を豊かにするカギであり、そうすることで、これまでとは全く違った気づきを得られるのである。
このリフレーミングのスキルを磨いてフレームを取り外す、とっておきの方法がある。何か問題を解決しようとする時、「なぜ」で始まる質問をするのだ。
例えば、橋を造ってくれと頼まれたら、よしわかった、と橋を造ることはできる。だが、そこで立ち止まって「なぜ橋が必要なのか?」と尋ねてみる。
おそらく、「川の向こう岸に行きたいから」という答えが返ってくるだろう。この答えでフレームが取り外され、様々な解決策を思いつく。
橋を使わなくても、向こう岸に渡る方法はいろいろある。トンネルを掘ってもいいし、フェリーに乗ってもいい。
このように、「なぜ」で始まる質問をすることは、驚くほど有効だ。何か問題を解決しようとする時、その答えの幅をぐっと広げてくれる。
編集部のコメント
人には誰でもクリエイティブな能力が備わっている。必要なのはそれを解放させてあげることだ ―― 。『未来を発明するためにいまできること スタンフォード大学 集中講義Ⅱ』は、そう主張し、クリエイティビティ(創造性)を高める方法を説いた本です。
著者のティナ・シーリグ氏は、スタンフォード大学で起業家精神とイノベーションを教えてきた人物です。本書は「集中講義Ⅱ」とあるように、前著で35万部のベストセラーとなった『20歳のときに知っておきたかったこと スタンフォード大学 集中講義』の第2弾です。
『未来を発明するためにいまできること』において、シーリグ氏は10年以上に及ぶ大学での指導経験から、「クリエイティビティは高められる」と自信を持って言い切ります。そして、視点を変えて問題を見る、観察力を磨くなど、教える中で蓄積されてきた創造性を高める様々な方法を、惜しみなく披露しています。
なお、氏はNHKで放映された『スタンフォード白熱教室』の講師も務めており、本書には同番組で行われたワークショップの様子など、日本でのエピソードも盛り込まれています。
個人やチーム、組織のクリエイティビティを引きだすための手法が満載の本書は、書名通り、私たち自身の「未来を発明する」ためのヒントを提供してくれるでしょう。