企業の目的の定義は1つしかない。それは、顧客を創造することである。
解説
「企業とは何か?」。それを決めるのは、顧客である。なぜなら、顧客だけが製品やサービスに対してお金を支払う意志を持ち、製品やサービスを財貨に変えるからだ。
しかも、顧客が価値を認め購入するものは、製品やサービスそのものではない。製品やサービスが提供するもの、すなわち効用である。
この顧客を創造することこそが、企業の目的である。従って、企業は2つの基本的な機能を持つ。それが、「マーケティング」と「イノベーション」である。
第1の機能であるマーケティングをきちんと行う企業は少ない。多くの企業が行っているマーケティングは、販売に関係する全職能の遂行を意味するに過ぎない。それはマーケティングではなく、販売である。
これに対し、真のマーケティングは顧客からスタートする。すなわち、「我々は何を売りたいか」ではなく、「顧客は何を買いたいか」を問う。「我々の製品やサービスにできることはこれである」ではなく、「顧客が価値ありとし、必要とし、求めている満足がこれである」と言う。
実のところ、販売とマーケティングは逆である。
マーケティングの理想は、販売を不要にすることである。マーケティングが目指すのは、顧客を理解し、製品とサービスを顧客に合わせ、おのずから売れるようにすることである。
そして、第2の機能であるイノベーションとは、新しい満足を生み出すことである。
単に製品とサービスを供給するだけでなく、より良く、より経済的な製品とサービスを供給しなければならない。
イノベーションの結果もたらされるものは、より良い製品、より多くの便利さ、より大きな欲求の満足である。
編集部のコメント
ビジネス界に多大な影響力を持つ思想家、P・F・ドラッカー。氏の代表作である大著『マネジメント――課題・責任・実践』は、およそマネジメントにかかわるすべてのことを解説した古典的名著です。
『マネジメント【エッセンシャル版】 基本と原則』は、この『マネジメント――課題・責任・実践』から最も重要な部分を選り抜き、まとめられました。マネジメントの使命とは何か、マネジャーが果たすべき役割とは何か、そして中長期的な視点で考えるべき戦略とは何か ―― 。本書には、ドラッカーのマネジメント論の“精髄”が凝縮されています。
「編訳者あとがき」によれば、本書は1975年に刊行された『抄訳マネジメント』(ダイヤモンド社)の編集と訳文を新たにし、章を追加して2001年に刊行されました。前著も含めると、およそ半世紀にわたって読み継がれているロングセラーと言えます。
ドラッカーの『マネジメント』と言えば、2010年、『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら』(ダイヤモンド社)がベストセラーとなったことでも話題となりました。
『マネジメント【エッセンシャル版】』は、経営者から社会人1年生まで、マネジメントに関わる、または関心をもつあらゆるビジネスパーソンに、自らの役割や責任を果たすための指針を与えてくれる1冊です。ぜひ、一読をおすすめします。
なお、エッセンシャル版の原本である『マネジメント――課題、責任、実践』は、ダイヤモンド社より刊行されています(『マネジメント――課題、責任、実践』上中下・ドラッカー名著集13~15)。
また、日経BPでも「日経BPクラシックス」のシリーズとして、『マネジメント――務め、責任、実践(Ⅰ~Ⅳ)』のタイトルで刊行されています。『TOPPOINT』では、Ⅰ巻の要約をご紹介しています。