電話をブランディングのツールとして用いているもう1つの例は、私たちの在庫にない特定のサイズの特定のスタイルの靴を探している顧客から電話があった場合にどうするかです。そのような場合には、どのオペレーターも、競合他社少なくとも3社のウェブサイトを調べ、在庫を見つけた時は顧客に他社のサイトを教えるように訓練されています。
明らかに、この場合、私たちは売上げを失うことになります。しかし、私たちは1つ1つすべての応対業務で生じる利益を最大にしようとはしていません。その代わり、私たちは電話に1本ずつ対応し、顧客1人1人と生涯続く関係を築こうとしているのです。
解説
ザッポスCEOのトニー・シェイは、「顧客との良い絆を作り出せれば、顧客の生涯価値は向上できる」と説く。そのため、同社はカスタマー・サービスと顧客体験に注力している。
多くの企業のコール・センターでは、オペレーターは電話の応対件数で評価される。そのため、彼らは通話時間を気にする。また、マニュアル原稿を用意し、売上を増やすためのアップセル(より高額な商品への誘導)を行う企業も多い。
だが、ザッポスでは通話時間を計らないし、マニュアル原稿もない。顧客に対応する際、社員は常に最善の判断をしてくれると信じているからだ。
編集部のコメント
靴や衣料などを扱うオンライン小売会社「ザッポス」は、卓越した顧客サービスで世界的に知られる存在です。2009年にアマゾンが12億ドルで同社を買収した際は、大きな話題となりました。
ザッポスの成長を牽引したのが、1999年から経営に携わったCEOのトニー・シェイ氏です。2020年に急逝しましたが、同社を売上高10億ドル超へと導いた彼は、スティーブ・ジョブズに並ぶカリスマ経営者として評されています。
本書『顧客が熱狂するネット靴店 ザッポス伝説 アマゾンを震撼させたサービスはいかに生まれたか』では、シェイ氏自身が、自らの生い立ちから経営哲学、ザッポス躍進の舞台裏までを語っています。
本書によれば、同社は広告にほとんど費用をかけず、その分をカスタマー・サービスや顧客体験の向上に投資しています。その象徴が、上掲のコール・センターです。顧客に「ワオ!」という感動を届けるため、1件1件の問い合わせに丁寧に向き合っています。
その結果、「信じられないくらい素晴らしいサービスだった」「ザッポス最高!」 ―― 感激のあまり、涙ながらに礼状を送った顧客もいるといわれるほどの高い満足度を実現しています。そして、こうした高い満足度が「リピート顧客」と「クチコミ」を産み、ザッポスの成長を支える最大の原動力になっていると、シェイ氏は言います。
本書では、こうしたザッポス流サービスを組織に根付かせる10の方法も紹介されています。「顧客価値を高めたい」「自社のファンを増やしたい」と考えているすべての人に、おすすめのビジネス書です。




