近年の日本家族を特徴づける対照的な2つの現象を取り上げる。それは「ペットの家族化」と「児童虐待」である。
 ペットの家族化とは、犬や猫などのペットを家族とみなす人々が増えていることである。児童虐待は、特に親による子どもへの暴力、養育放棄などを含み、ときには、死に至らしめることもある。
 前者は、「本来家族でない動物を家族であるかのように扱う」現象であり、後者は、「本来家族である子を家族でないかのように扱う」現象である。

解説

 この対照的な2つの例から見えてくるのは、「家族の形式」と「家族の内実」がずれ始めているということだ。
 家族の形式とは、「親子」「夫婦」など、一般的に家族と思われている関係である。一方、家族の内実とは、「相手を大切にする」「愛情がある」など、家族の本質と思われている関係性だ。
 ペットの家族化は、一般的には家族とみなされない対象(ペット)に家族の内実が存在する現象であり、児童虐待は、家族とみなされる対象(実の子)に家族の内実が欠如している現象だ。
 この2つの現象には、家族にとってもう1つの重要な変化が含まれている。それは、「家族は選択可能なのか」という問いである。
 従来、親子をはじめ、家族は選択不可能で、解消が困難な関係性と認識されてきた。しかし、ペットの家族化では、本来家族になり得ない動物が家族とされている。そして児童虐待では、親が子を捨てる、つまり家族であることを解消している。
 家族にしたり、解消したりすることが一方的にできるようになった時、それを「家族」と呼べるのか。こうした現実に我々は直面しているのだ。

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