まわりの知人やマスコミに登場する有名人等の中から、「頭がいい」と思う人を思い浮かべてみてほしい。およそ三種類に大別できるのではないだろうか。
第一は記憶力がよく何でも知っている「物知り」の人である。(中略)
第二は、対人感性が高くて人の気持ちを瞬時に察知して行動できる、「機転が利く」あるいは「気が回る」タイプの人である。(中略)
そして最後のタイプが数学の問題やパズルを解くのが得意な「考える力」の強いタイプで、これを本書では「地頭がいい」タイプと定義する。
解説
「地頭」とは、コンサルティング業界で比較的頻繁に使われる言葉で、考える力のベースとなる知的能力のことである。
例えば、人材採用の場面で「地頭のいい人を採りたい」などという表現をするが、この「地頭のよさ」は、世に言う「頭のよさ」とは違う。
上掲のように、いわゆる頭がいい人は3種類に大別できるが、その中で「地頭がいい」のは最後の「考える力」の強いタイプのことだ。
3つの能力は、いずれもビジネスや日常生活に不可欠な知的能力である。だが、特に「地頭力」は、未知の領域で問題を解決する能力という点で、環境の変化が激しく、過去の経験が未来の成功を保証するとは限らない現在において、重要な能力といえる。
地頭力がコンサルティング会社等の人材採用の基準の1つになっている最大の理由は、地頭のいい人はどの分野に取り組んでも業務知識の習得が速く、高いパフォーマンスが期待できるからだ。
そして、地頭力は陳腐化しない。逆に言えば、地頭力というのは昔から変わらない能力なのだ。
編集部のコメント
インターネットによる情報検索が発達し、近年では生成AIも登場したことで、私たちは世界中のありとあらゆる情報を一瞬にして入手できるようになりました。
しかし、インターネットに頼りすぎるあまり、多くの人が「自分の頭で考える力」を失いつつあります。
情報が氾濫する現代だからこそ、知識を活用して自ら“考える力” ―― すなわち「地頭力」の重要性が一層高まっている、とビジネスコンサルタントである細谷功氏は説きます。
本書『地頭力を鍛える 問題解決に活かす「フェルミ推定」』では、その地頭力を効率よく鍛える方法を体系的に解説しています。
この本によれば、地頭力の本質は、「結論から考える」仮説思考力、「全体から考える」フレームワーク思考力、「単純に考える」抽象化思考力という3つの思考力にあります。地頭力の高いビジネスパーソンは、これらの思考力を身につけていると著者は述べています。
そして、この3つの思考力を鍛える上で有効なツールとなるのが、「フェルミ推定」です。
これは、例えば「日本全国に電柱は何本あるか?」といった荒唐無稽とも思える問いに対し、仮説を立て、前提を整理し、論理的に答えを導く方法です。重要なのは正解ではなく、思考のプロセスを積み上げることにある、と著者は言います。
フェルミ推定を通じて「地頭力」という知的筋肉を鍛え、情報の海を泳ぎ切る力を身につけて欲しい ―― それが、著者が伝えたいメッセージです。
『地頭力を鍛える 問題解決に活かす「フェルミ推定」』は、ビジネスパーソンはもちろん、「考える力」を磨きたいすべての人に向けた、自己啓発の名著です。思考の武器を手にし、生産性を高めたい方に、ぜひご一読をおすすめします。




