「懸命に働け、堂々と勝負しろ、そうすれば成功できる」と人は言う。残念ながら、それが間違っていることを示す証拠がたくさんある。
解説
人々に、「成功をもたらす要素は何か?」と尋ねれば、「努力」という回答が1位になる。
ところが研究によると、それは大外れだ。「上司に好印象を与えた者」は、「より懸命に働いたが、上司への印象を気にかけなかった者」より高い勤務評価を得ることが、調査で証明されている。
多くの場合、これは「ゴマすり」を意味する。上司を機嫌よくさせておくことができれば、実際の仕事ぶりはあまり重要ではない、ということだ。
そして、出世するのはゴマすりだけではない。いわゆる嫌なヤツもだ。『ハーバード・ビジネス・レビュー』誌によると、同調性(人と仲良くつき合うことを重んじる性格)の低い人の方が、同調性が高い人より年収が多いことが明らかになった。
悲しいことに、人間は、「親切は弱さの表れ」だと勘違いする傾向があるようだ。研究によれば、親切すぎる人は能力が低いと推測される傾向がある。現に、嫌なヤツの方が第三者には力があるように見えたりする。
企業のCEOは、サイコパス(精神病質者)の頻度が高い職業だが、調査によると、こうしたネガティブな特性はむしろ、リーダーになる可能性を高めるという。仕事の能力が抜群で、誰よりも早く地位を駆け上がる人は、チームの一員であろうとする人間ではない。彼らは、権力を握ることに照準を合わせている人間である。
私たちは、「最後には善人が勝つ」と教えられてきた。しかし、多くの研究結果によれば、そうではないようだ。
編集部のコメント
「私はこうして成功した」「偉人はこんな決断をした」…。ビジネス書にあふれる“成功法則”は、一見もっともらしく語られ、多くの人に信じられてきました。しかし果たして、それは本当に通用するのでしょうか。
本書は、そんな世の中のあらゆる「成功ルール」を、エビデンスベースで徹底検証したベストセラーです。著者は、大人気ブログ“Barking Up The Wrong Tree”を運営するエリック・バーカー氏。『ニューヨーク・タイムズ』紙など主要メディアでも記事が繰り返し引用される、米国を代表するブロガーです。
原書は刊行直後から、アダム・グラントやダニエル・ピンクといった有名作家が絶賛。2017年上半期、米アマゾンが選ぶ「ベストビジネス書」の1冊にも選定されました。また『言ってはいけない』の橘玲氏が監訳を務めた邦訳版はテレビや雑誌、SNSで話題となり、12万部を超えるヒットを記録しました。
本書の特徴は、自己啓発書にありがちな単純化された“ノウハウ集”ではない点です。膨大な参考文献に基づいた、「エビデンスベースの検証」が存在します。
例えば、上掲の「懸命に働いても成功できない」や、「高校の首席は億万長者になれない」「仕事の大成功と家庭円満は両立しない」等々、こうした驚くべき事実をデータで裏付け、成功者のリアルな姿を浮き彫りにします。
さらに本書は、「世界を変えるのは、あなたの“長所”ではなく“欠点”」など、最先端の「成功サイエンス」を提示。誰でも使える「普遍的な成功法則」はありませんが、エビデンスを基にした「正しいとわかっている」やり方には納得感があり、それが多くの読者を惹きつけてやまない理由でしょう。
現状に不満がある方、数々の自己啓発本を読んでも成果を感じられなかった方にこそ、本書は有効な1冊です。紹介されている様々な成功法則の中に、自分に合った「成功のかたち」を見つける手がかりが得られるはずです。