「最後の藁1本がラクダの背中を折る(The last straw breaks the camel’s back)」という諺がある。
ラクダにたくさんの荷物を背負わせようと、欲張ってどんどん荷を積み上げてゆく。ラクダは何もいわずにひたすら我慢しているが、あるとき、最後に載せた藁1本で背骨が折れてしまう、という話である。
つまり「物事には限界があるので限度をわきまえよ」という教えである。
解説
この話のような「最後の藁1本」現象は、様々なところで起こっている。
欧米では、投資銀行が身のほどを知らずに法外な給料をとり、強欲の限りを尽くして金を稼ごうとした結果、サブプライム・ローン問題が起こり、リーマン・ブラザーズがあっけなく倒産した。
日本でも、磐石だと思われていた企業が、わずかなはずみで崩れることがある。例えば、日本航空や東京電力がそうだ。組織や人が「藁1本で壊れる」事態は、いつやってくるかわからない。
とはいえ、崩壊の予兆が全く見えないのは、先見力が足りないからだ。実はその組織は、前から制度疲労の限界に達していたのである。
崩壊の予兆に気づかないのは、油断をしているか、物事の遠因を考えていない人だ。潰れた会社はもともとガタが来ていたのだから、中にいる社員なら日頃の雰囲気で感づかなければならない。
編集部のコメント
政治や経済などについて語る時、ついSNSやメディアの意見の受け売りをしてしまう――。そんな経験はないでしょうか。それは、思考力が衰えているからかもしれません。
本書『思考力の磨き方』は、そんな人におすすめの本です。周囲の情報に流されず、自分の頭で未来を見通すための“思考の鍛え方”が説かれています。
著者の評論家・日下公人氏は、東日本大震災後の政府や東京電力の対応を例に挙げ、データや証拠ばかりに頼る学者や、物事を「絞って考える」タイプの人は、予測不能な事態に対応できないと語ります。つまり、アナリシス(分析)では限界があり、アナロジー(類推)の力を鍛えることこそが、未来を読み解くカギになるというのです。上掲の一節も、その一例といえるでしょう。
また本書では、今まで当然と思っていたことは、これからも当然だと考える「直線思考」ではなく、思い込みを捨てることや、発想を広げて様々な「if(もしも)」を考える「拡散思考」の重要性が説かれます。それにより、これまで見えなかった可能性や選択肢が立ち現れてくる、と日下氏は語ります。
2012年刊行の本ながら、フェイクニュースなど様々な情報が錯綜し、思考力が問われる現代にこそ読んでおきたい1冊です。既存の枠にとらわれない、“考える力”を養うヒントが詰まっています。




