「人と社会の、そして人間同士の関係を、文字どおり変えてしまう。おそらく、何らかの形で生産性も損なわれる。今後、子供たちの脳にどんな影響が出るのか、誰にもわからない」
―― フェイスブック初代社長
ショーン・パーカー
解説
私たちが使うスマホなどのデバイスは、薬物やアルコールなどと同じで、依存症を引き起こす。これは、数多くの研究を通じて証明されている。
ゴールドマン・サックスの報告によると、平均的なユーザーは1日のうち50分をフェイスブックに、30分をスナップチャットに、21分をインスタグラムに費やす。すべてを合計すれば、生産性や人間関係が影響を受けることは明らかだ。
また、利用時間が長引くと、当然ながら健康状態も悪化する。近年の研究では、ソーシャルメディアを使うことが多い若年成人ほど、うつ病にかかりやすいことが明らかになっている。
「テクノロジーは私たちの脳をどうするつもりなのか」。近年、こうした抗議の声がシリコンバレー全体で頻繁に聞かれるようになった。そして、業界の著名人の多くが自らの過ちを認め始めた。
例えば、フェイスブックの初代社長ショーン・パーカーは最近になって、フェイスブックは意図的にユーザーの脳に働きかけ、彼らが何度も戻ってくるように仕向けていたことを認めた。
この目的のために、フェイスブックは「人の心理の弱点」を突いてユーザーを中毒にする。投稿に対して「いいね」を送ったり、コメントをしたりするたびに、「少しずつドーパミンがあふれ出す」とパーカーは説明した。
そして彼は、それがどんな結果につながるか予想していなかったとして、上掲の発言をしている。
編集部のコメント
世界を席巻する巨大IT企業群である、グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップル ―― 。その頭文字から「GAFA」と総称される彼らは、経済、政治、そして私たちの日常生活にまで深く浸透し、計り知れない影響力を持っています。
その一方で、GAFAの支配が拡大することへの批判も強まっています。
本書『邪悪に堕ちたGAFA ビッグテックは素晴らしい理念と私たちを裏切った』は、この立場から、デジタル界の巨人たちの“闇”の部分に斬り込んだ1冊です。
「邪悪になるな」という言葉は、グーグルの行動規範の第一条として有名ですが、著者のジャーナリスト、ラナ・フォルーハー氏は、その理念のあった時代は遠い昔のことだと指摘します。
フォルーハー氏がこの本を書いたきっかけは、彼女の息子がスマホのオンラインゲームに依存してしまったことだったそうです。なぜ、ふだんは行儀がよく、分別もわきまえている子どもがゲーム中毒に陥るのか? その答えを探る中で、彼女はGAFAの巧妙な「支配の構造」にたどり着きました。
『邪悪に堕ちたGAFA』は、ビッグテックの政治への関与や、独占の状況、人々を中毒にさせる仕組みづくり等、様々な視点から“負の側面”を明らかにします。かつては光り輝く新星とみられたIT企業が、いかにして巨大な力を得て、“邪悪”へと変質したのか、その過程を丹念に描きます。
仕事で疲れているのに、スマホやSNSからとめどなく流れてくる情報を見続けてしまう。隙間時間だけと思って始めたゲームがやめられない…。
そんなビジネスパーソンにとって、この本はビッグテックとの距離を見直し、「人間らしいデジタルとの付き合い方」を考えるヒントを与えてくれるでしょう。ぜひご一読をおすすめします。




