AI世界秩序によって、ウィナー・テイク・オール経済と、中国とアメリカの少数の企業に前例のないほどの富の集中が同時に発生する。これこそがAIがもたらす真の危機だと私は思う ―― 広範囲におよぶ失業と広がる格差から生まれる社会不安と政治体制の崩壊である。
解説
近いうちに、私たちはAIが誘発する雇用と不平等の危機にさらされる。
まず、雇用の危機。AIによる作業の自動化は、生産性を大きく向上させるが、それは同時に、多くの労働者から仕事を奪う。こうした解雇は、ブルーカラー、ホワイトカラーの区別なく行われる。高度な教育を受けたホワイトカラー層も、AIが競争相手では勝ち目はない。
そして、不平等の危機。AIは世界の経済的不平等を悪化させる。AI搭載ロボットは製造業に革命を起こし、低賃金の労働者を抱える第三世界の工場を廃業に追い込む。そのため、貧困国は停滞するが、一方でAI超大国は飛躍する。
だが、そうした技術大国でも、AIは持てる者と持たざる者との格差を広げる。増え続けるデータ量によって正のフィードバック・ループが生まれると、価格下落と同時に企業間の競争が消え、自然と独占に向かう。そしてAIで成功した巨大企業の利益は、空前の規模になる。