立派な業績を上げればご機嫌取りなどしなくても自ずと上に行けると考えるのは、多くの人が犯しがちな重大な思い違いの一つである。(中略)もしあなたが上をめざすなら、仕事さえできればいいのだという考えは捨てた方がいい。(中略)
実績と昇進の関係に関しては組織的な調査が行われており、数多くのデータがそろっている。(中略)多くの組織、多くのポストで、実績はさほど重要な意味を持たないことが、データによって明らかになっている。つまりあなたの仕事ぶりや目標達成度はおなじみの人事評価にも反映されないし、在任期間や昇進にすらさほど影響しないのである。
解説
では、昇進には何が必要なのか? 例えば ――
- ・上司にあなたの存在を気づかせよ
地位のある人は忙しい。従って、上司は自分の日頃の仕事ぶりをよく見ていると考えてはいけない。しかるべき評価を得るには、まずは自分がどんな仕事をしているか、気づいてもらう必要がある。そのために一番いいのは、上司と話すことだ。
- ・上司が気にすることを気にする
上司が重視することと、あなたが大切と考えることは、必ずしも一致しない。従って、仕事で重視するのはどんなことか、自分は何を期待されているのか、といったことを折に触れ質問しよう。
- ・上司を気分よくさせる
自分の仕事ぶりについて考える時、確認すべき点がある。それは、自分の発言や仕事の成果は上司をいい気分にさせているか、ということだ。あなたが昇進する確実な方法は、端的に言って、上司を“ご機嫌”にしておくことなのだから。少なくとも仕事の成果と同程度には、上司との関係に気を配るべきだ。
編集部のコメント
「きちんと業績を上げていれば出世できる」「ご機嫌取りなんて必要ない」「上昇志向むき出しのあいつは、いつか馬脚をあらわして左遷されるだろう」…。
私たちは、組織での成功や出世について、そんなふうに無邪気に考えがちです。
これに対し、本書の著者ジェフリー・フェファー氏は次のように指摘します。世の中は公正だというのは、幻想にすぎない。そんな思い込みは、権力や影響力を手にする上では「邪魔物」である、と。
フェファー氏は、スタンフォード大学の著名教授。2008年にウォール・ストリート・ジャーナルで「経営分野で最も影響力のある思想家20人」に選ばれるなど、組織論、人事管理論できわめて高い評価を得ています。
そんな氏が、組織で出世し、人の上に立つための実践的な方法を明かしたのが、本書『「権力」を握る人の法則』。コネの作り方や人脈の開拓法、周囲の評判を上げる方法など、大規模な社会学的調査や研究をもとに、出世に際し重視される要素を赤裸々に語ります。
それらの要素から見えてくるのは、「権力や地位を手に入れることは、ほとんどの人にとって可能である」ということ。それも、これまでより少し戦略的に行動するだけで、です。
実際、本書で氏がすすめるのは、陰謀や暗躍といった大層なことではなく、誰にでもできる小さなことです。例えば、よい第一印象を与えることを心掛けたり、上司が重視することを気にするようにしたり。
こうしたテクニックの数々は、権力闘争に勝つことに限らず、自分の企画を通したい時など、日々のビジネスシーンにも活用可能でしょう。
その意味で本書は、組織内での出世を目指す人だけでなく、他者との仕事の仕方に悩むビジネスパーソンにとっても、大いに参考となるはずです。