踏まれても踏まれても立ち上がる。これこそが、誰もが期待する雑草の姿だろう。人々は、踏まれても踏まれても、負けずに立ち上がる雑草の生き方に、自らの人生を重ね合わせて、喝采を惜しまない。
そんな雑草の強さにあこがれる方々には誠に申し訳ない話だが、残念ながら雑草は踏まれたら立ち上がらない。
解説
歩道やグラウンドなど、人がよく歩くような場所に生えた雑草を見てみると、どれも、ぺったりと地面に張りついている。
これは、踏まれて倒れてしまったのではない。立ち上がれば、踏まれた時に茎が折れたり、傷ついたりする。そのため、最初から地面に伏せているのである。
例えばタンポポは、何度か踏まれると、茎を横に伸ばして、地面に近いところに花を咲かせるようになる。こうして、踏まれた時のダメージを小さくしているのだ。
この雑草の作戦は、何とも期待外れで、情けないもののように思えるかもしれない。
しかし、そうではない。
どんなに踏まれても生き抜き、花を咲かせてタネを残す。これが雑草にとって、最も大切なことである。それさえ見失わなければ、小さなプライドなどどうでもいい。
踏まれても立ち上がるような無駄な努力をするよりも、地面に伏せている方がよほど目的にかなっている。単純な根性論よりも、雑草の生き方はもっとしたたかなのである。
編集部のコメント
『雑草に学ぶ「ルデラル」な生き方 小さく、速く、多様に、しなやかに』は、雑草といわれる植物がなぜこれほどはびこっているのか、その秘密を解き明かすとともに、雑草の生存戦略をビジネスや人生に活かす方法を説いた本です。
著者の稲垣栄洋氏は、「雑草生態学」を専門とする農学博士。本書のプロローグによれば、稲垣氏はもともと、雑草について、たくましく生きる「強い植物」のイメージを持っていたといいます。ところが、大学院で「雑草学」を学ぶうちに、植物学の世界では「弱い植物」として捉えられていることを知り、驚きます。弱いからこそ、知恵と工夫で環境に適応し、逆境を克服しようとする。氏は、そんな雑草のしたたかで合理的な生き方に魅了されたといいます。
弱いとされる雑草が、なぜ強く見えるのでしょうか。秘密は、「ルデラル」にあります。「ルデラル」とは、荒れ地を生きる植物のこと。道端などでよく目にする雑草が、その典型です。
本書によれば、ルデラルには2つの大きな特徴があります。1つは、その戦略は“弱者の戦略”であること、すなわち「競争しない戦略」です。もう1つは、「逆境を味方につける生き方」です。
『雑草に学ぶ「ルデラル」な生き方』は、こうしたルデラルな生き方の特徴や法則、そして戦略について解説するとともに、それらを人間社会でどう活用すればうまくいくかを語っています。逆境や困難に直面した時、それを克服するヒントを与えてくれるビジネス書として、多くの方に読んでいただきたい1冊です。