企業組織の研究者であったメアリー・パーカー・フォレットが、図書館で争う二人の男性のたとえ話を紹介している。
一方は窓を開けたいが、一方は閉めたままにしておきたい。「ちょっとだけ」「半分」「四分の三」と、どれだけ開けるかでいい争っているが、水かけ論である。
そこに女性司書がやってくる。開けたがっているほうに理由を聞くと「空気を入れ換えたいから」といい、閉めたがっているほうは「風が入るのが嫌だから」という。司書はしばし考えたのちに隣の部屋の窓を全開にし、両者の言い分をかなえた。
解説
この話のような状況は、交渉の場面でよく見られる。双方の主張(合意条件)の対立が問題であるように思えて、「条件」のことばかり話し、しばしば膠着状態に陥ってしまう。この司書も、「窓を開けるか・閉めるか」という条件にしか目がいかなければ、解決策は思いつかなかっただろう。
だが、司書は2人の本当の要望、つまり「空気を入れ換えたい」「風が入ってこない方がいい」という「利益」の部分を考えた。このような条件と利益の区別はとても重要である。
交渉で本当に話し合うべきは、食い違っている主張や条件ではなく、お互いの利益(ニーズや要望、関心事)についてだ。対立している条件の背後にある利益に視点を移すと、自分だけでなく、相手側の利益にもなる案が見つかることが多い。
では、相手の利益はどうすればわかるのか?
まず、相手の身になって考える。各々の条件について、「なぜこれを提示しているのか」を考えるのだ。そこで出てきた答えは、相手の利益である可能性が高い。また、互いの様々な利益を整理するには、思いつく端からリストにするといい。