2024.4.8

編集部:西田

最初の90日が勝負! “新任リーダー”が成功するための行動指針

最初の90日が勝負! “新任リーダー”が成功するための行動指針

 新年度が始まって、1週間が過ぎました。
 異動や昇進、転職などで、4月からはプレイヤーではなくマネジャー・リーダーとして働いている、という「新任リーダー」の方もいるのではないでしょうか。
 挨拶回りや引継ぎも済み、いよいよチームを率いる者として本格始動。やりがいや期待を抱きつつ、何をすればいいのか、自分に務まるのかと不安を感じてもいる…。

 今週は、そんな新任リーダーに読んでいただきたい1冊、『ハーバード流マネジメント講座 90日で成果を出すリーダー』(マイケル・ワトキンス 著/翔泳社 刊)をPick Upします。
 新しい任務を軌道に乗せたり、新しい会社に順応したりする「リーダーシップの移行」について解説した本で、2003年の刊行以来、英語版だけで80万部超えというロングセラーです。『エコノミスト』誌は、本書を「オンボーディングのバイブル」と称賛しています(「オンボーディング」とは、新しい人材を組織になじませ、スムーズに機能させるプロセスのこと)。
 ちなみに著者のマイケル・ワトキンスは、「今週のPick Up本」の「重大な事件・事故を未然に防ぐことはできないのか? 9.11同時多発テロを基にその対処法を考える」の回(2023/9/11)で紹介した本、『予測できた危機をなぜ防げなかったのか? 組織・リーダーが克服すべき3つの障壁』(東洋経済新報社 刊)の著者でもあります(マックス・H・ベイザーマンとの共著)。

 新任リーダーの中には、それまでの立場からの大きな変化に直面して、「まずは致命的な失敗を避けよう。そのためにはじっくり時間をかけて、少しずつ立場と環境に慣れていこう」と慎重に考える人もいるのではないでしょうか。
 ですが、それが必ずしもよい結果につながるとは限りません。本書は、こう説いています。

 

上司、同僚、部下といった組織の主な人々は、通常は3カ月ほどでリーダーが牽引力を発揮し始めることを期待する。

(『90日で成果を出すリーダー』 xxiiiページ)


 平日が勤務日だとすると、3カ月後の6月末までの勤務日数は今日を含めて57日。このわずか57日の間に、リーダーとしての存在感を出すことが求められるということです。
 しかも、本書はこう忠告しています。

 

1300人以上の人事担当上級管理者を対象に調査をおこなったところ、約90%が「新しいポストへの移行期は、リーダーの職業生活において最も難しい時期である」に同意した。また、約3分の2が、「最初の数カ月の成否は、その職務全般の成否を占う重大な要素である」に同意した。(中略)
信用を築いて初期の成果をあげることに成功すれば、流れに乗って残りの在任期間もうまくいく可能性は高い。しかし、早い段階で落とし穴にはまると、そこから先は苦しい戦いになるだろう。

(『90日で成果を出すリーダー』 xi~xiiページ)

 

 最も困難な時期にもかかわらず、そこでの結果が今後を大きく左右する。そんな厳しい3カ月の入り口に今、自分は立っているということを、新任リーダーはまず覚えておきたいところです。

 では、具体的にどうすれば、「落とし穴にはまる」ことを避けられるのか?
 本書は、そのために必要な作業として、次のようなことを挙げています。

 

  • ・準備をととのえる
  • ・効率よく学ぶ
  • ・状況に合った戦略を立てる
  • ・初期の成果をあげる
  • ・成功条件を交渉する

 

 これらの詳細については、「TOPPOINTライブラリー」でお読みいただけます。
 例えば、最後の「成功条件を交渉する」などは、新任リーダーは頭に置いておいて損はないでしょう。
 課長やチーム長として1つの「組織」を率いることになった時、まず意識が向くのは、リーダーとして課員にどう振る舞うか、誰にどのような仕事を割り当てるか、といった、メンバーとの関係ではないでしょうか。ですが、本書は上司との関係を大切にせよと言います。

 

上司との関係は、個々の関係の中では何よりも重要なので、新しい上司と生産的な協力関係を築き、上司に正しい期待をもってもらう方法を見つける必要がある。

(『90日で成果を出すリーダー』 xxページ)

 

 もちろん、部下との関係は大切です。ですが、まず自分が上から求められている役割を理解することなしに、チームに最高のパフォーマンスを発揮させることは難しいでしょう。そのため、上司との積極的な対話は、新任リーダーにとって最優先事項の1つです。
 「距離を置いてはならない」「上司が変わることを期待してはならない」「上司にとって重要な分野で初期の成果をめざす」…。
 本書の説くアドバイスは、その際の姿勢を教えてくれるものですが、どれもつい忘れがちなものです。折に触れて思い返すことで、組織を率いる人間としての自分の立ち位置を、しっかりと固めていくことができるでしょう。

 本書は、新任リーダーが押さえておくべき上記のような“コツ”を、各章の最後に「チェックリスト」としてわかりやすくまとめています。
 例えば、先述した「成功条件を交渉する」については、次のように要点を示します。

 

  • 1 これまで、新しい上司とはうまく関係を築いてきたか。何がうまくいったか。どこを改善する必要があるか。
  • 2 組織の状況についての会話を計画しなさい。現在わかっていることをもとに、この会話で上司にどのような問題を提起するか。最初に何を伝えたいか。どのような順番で問題を提起したいか。

(以下略)

(『90日で成果を出すリーダー』 102~103ページ)


 こうしたチェックリストだけでも有用ですが、この本はさらに、各章の冒頭がわかりやすい失敗事例・成功事例の物語で始まっています。プレイヤーとしてのやり方から抜け出せずマイクロマネジメントに陥ってしまった、前の部署で成功したやり方を新しい職場にもそのまま持ち込んでしまったなど、いずれも「あるある」な内容であり、新任リーダーにとっては、失敗の先取り体験ができるといえるでしょう。
 陥りやすい失敗が頭の片隅にあるだけでも、自分が同じような立場に置かれた時の対応の仕方は変わってくるはずです。

 ここまで、『90日で成果を出すリーダー』を新任リーダーへお勧めしてきましたが、もちろん、この本はそれ以外の人にとっても有用です。
 例えば新任リーダーを新たに迎えた上司にとっては、彼らが思うような成果を挙げられていない場合、本書を読み、「落とし穴」にはまっていないか、必要な作業をどこまで行えているのかを把握することで、状況を打開するアドバイスができるかもしれません。
 あるいは、部下となる人たちにとっては、新任リーダーがどういった意図で行動しているのかを知ることで、意思疎通や業務遂行の円滑化に役立つかもしれません。
 そうした意味で本書は、組織における「共通言語」となり得る本といえます。すべての立場の人に、今の時期にこそ一読をおすすめしたい1冊です。

(編集部・西田)

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 「編集部員が選ぶ今週のPick Up本」は、日々多くのビジネス書を読み込み、その内容を要約している編集部員が、これまでに『TOPPOINT』に掲載した本の中から「いま改めてお薦めしたい本」「再読したい名著」をPick Upし、独自の視点から読みどころを紹介するコーナーです。この記事にご興味を持たれた方は、ぜひその本をご購入のうえ通読されることをお薦めします。きっと、あなたにとって“一読の価値ある本”となることでしょう。このコーナーが、読者の皆さまと良書との出合いのきっかけとなれば幸いです。

2014年6月号掲載

ハーバード流マネジメント講座 90日で成果を出すリーダー

昇進、あるいは、新しい職場に異動したら、「最初の90日」が勝負。この期間をどう乗り切るかで、以後の成功、失敗がほぼ決まる。では、90日の間にすべきこととは? リーダーのキャリア移行を支援する著者が、「効率よく学ぶ」「初期の成果をあげる」「味方の輪をつくる」など、必要な作業を紹介。あらゆる新任管理職が踏まえるべきガイドラインを示す。

著 者:マイケル・ワトキンス 出版社:翔泳社 発行日:2014年3月
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