8月8日(木)、最大震度6弱を観測する地震が発生しました。震源は宮崎県東部沖合の日向灘、地震の規模を示すマグニチュードは7.1と推定されています。
この地震を受けて、新たな大規模地震が発生する可能性が高まっていると考えられたことから、気象庁は「南海トラフ地震臨時情報」を初めて発表しました(「南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)について」/2024年8月8日 気象庁)。
ちなみに「トラフ」とは、細長く延びる海底のくぼみのこと。そして「南海トラフ」とは、静岡沖の駿河湾から九州の日向灘沖までの広い範囲に存在するトラフで、南からフィリピン海プレートが西日本に押し寄せてきて、無理やり沈み込んでいるためにできたものです。
南海トラフ地震が発生した場合、南海トラフ沿い、すなわち静岡県から宮崎県にわたる広い地域で強い揺れが起きると想定されています。また、それによる建物の倒壊や大津波などにより、西日本では6000万人が被災すると考えられています。
今年1月1日に起きた能登半島地震からわずか8カ月。その傷も癒えぬ間に、これほどの大地震がやってきたことで、南海トラフ地震への危機感はかつてないほど高まっているように感じます。刻々と迫る危機に、私たちはどう備えればよいのでしょうか?
そのヒントを知る良書として、今週のPick Up本では、巨大地震や火山噴火について詳述し、災害に対する心構えを説いた『揺れる大地を賢く生きる 京大地球科学教授の最終講義』(鎌田浩毅 著/KADOKAWA 刊)を紹介します。
日本は世界有数の地震国
著者の鎌田浩毅氏は、地球科学を専門とし、京都大学で長年教鞭を執ってきた人物です。わかりやすい解説に定評があり、テレビをはじめとしたメディアにも多く出演されています。TBS系列「情熱大陸」や日本テレビ系列「世界一受けたい授業」などで、鎌田氏の話を聞いたという方もいるかもしれません。
本書『揺れる大地を賢く生きる』は、そんな鎌田氏が定年を迎えるにあたり、京都大学で最後に行った講義を基にして刊行されたものです。
鎌田氏によれば、「世界中で発生する地震のうち、約1割は日本で起きる」と言われるほど、日本は世界有数の地震国だそうです。その理由は、日本列島に「活断層」が2000も存在していることにあります。
日本列島のどこに行っても地震が起きない場所はないのです。(中略)
いまだに常識となっていませんが、日本で暮らす私たちは、活断層のない場所に逃げることができないのです。(38ページ)
活断層とは、何年かの周期で繰り返し動いている断層のこと。そこに大きな力が加わり、ずれが生じることで地震が発生します。気象庁の「地震情報」をのぞいてみると、ほぼ毎日、日本のどこかで地震が起こっていることがわかります。
では、南海トラフ地震はいつ頃起こると見られているのでしょうか。
鎌田氏は、1946年に起きた南海地震など過去のデータの検証を根拠に、次のように予測しています。
過去の活動期の地震の発生パターンを統計学的に処理して最近の地震活動データにあてはめてみると、次の南海地震が起こるのは2030年代後半という予測が出ました。さらに、過去に繰り返された地震を観測した、地震活動の統計モデルから予測したところ、次の大地震の発生は2038年ごろ、という結果が出ました。(中略)
私自身はこれらのデータから、どんなに遅くとも2050年までには次の巨大地震が発生するだろうと考えています。(52ページ)
つまり、今から30年以内には巨大地震が起こる可能性が高いというのです。
では、近い将来起こると言われる巨大地震に、どう備えればよいのでしょうか?
減災の意識を持つ
鎌田氏は、起こりうる大地震に備えて、次のような意識・心構えが大切だと述べています。
自然が引き起こす巨大な災害を、人間が完全に防ぐことはできません。つまり、よく考えれば「防災」には限界があるのです。(中略)現実には、災害をできる限り減らすこと、すなわち減災しかできません。
(183~184ページ)
よく言われることとして、個人レベルでできる減災の取り組みには、例えば、「災害時の危険区域や避難場所を確認する」「普段から備蓄や常備品を準備しておく」といったことが考えられます。また、特に夏は休暇を利用してどこか国内旅行へ出かけるという方も多いでしょう。万が一、旅先で地震に遭遇した時に備えるために、どの経路で、どこに避難すればよいかを確認することも大切かと思います。
企業レベルでは、防災設備の設置・導入や、BCP(事業継続計画)の作成などが重要です。特に、スマートフォンが手放せない現在においては、インターネットに接続できない状況下で、顧客や従業員同士でどのように連絡を取り合うか、事前に決めておくといいでしょう。そうすれば、いざ災害が起きた時にも落ち着いて行動できるはずです。
当然のことながら、大地震など起きてほしいはずがありません。しかし日本に住む限り、いつ、どこで大地震に遭遇するかはわかりません。今回の日向灘での地震を契機に、専門家の意見に耳を傾けながら、改めて減災の対策について見直してみてはいかがでしょうか。
(編集部・油屋)
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「編集部員が選ぶ今週のPick Up本」は、日々多くのビジネス書を読み込み、その内容を要約している編集部員が、これまでに『TOPPOINT』に掲載した本の中から「いま改めてお薦めしたい本」「再読したい名著」をPick Upし、独自の視点から読みどころを紹介するコーナーです。この記事にご興味を持たれた方は、ぜひその本をご購入のうえ通読されることをお薦めします。きっと、あなたにとって“一読の価値ある本”となることでしょう。このコーナーが、読者の皆さまと良書との出合いのきっかけとなれば幸いです。
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