2025.2.3

編集部:福尾

ジョブズはわが子にiPadを触らせなかった!  最新研究が明かすスマホ依存になる理由とは

ジョブズはわが子にiPadを触らせなかった!  最新研究が明かすスマホ依存になる理由とは

 通勤のスキマ時間に、ランチをしながら、寝る前のベッドで…
 無意識のうちについ触ってしまうスマホ。SNSで次から次へと流れてくる動画を見るうちに、気づいたら1時間もたっていた! なんて経験がある方も多いのではないでしょうか。

 昨年末、オーストラリア議会では、16歳未満のSNSを禁止する法案が可決されました。対象はX(旧ツイッター)やTikTokなど。子どもが接続できないようにする対応を怠った企業には罰金が科されるとのことです(「オーストラリア、16歳未満のSNS利用禁止案可決 世界初」/日本経済新聞電子版2024年11月28日)。子どものSNS利用が禁止されるのは国家レベルでは初となり、大きな話題を呼びました。

 子どもだけでなく、大人も夢中にさせるスマホやSNS。調査によれば、現在、大人は1日に約3時間以上をスマホに費やしており、20代~40代では約2割が5時間以上も使っているそうです(「50年間の変化で見るビジネスパーソンの生活時間」/シチズン時計意識調査2024年6月10日)。
 私も、自分のiPhoneのスクリーンタイム機能で利用時間を確認したところ、1日平均で3時間半も使っていました。仕事と子育てで毎日忙しいはずなのに、いったいいつ何を見ているのか…。覚えていないので、きっと無意識に見てしまっているのだと思います。通知が届いていないのにもかかわらず、なぜか「届いた」と思い込んでしまい、スマホを見てがっかりしたことは一度や二度ではありません。
 スマホは、ビジネスや生活に便利な一方で、常にチェックしていないと落ち着かなくなるなど「スマホ依存」になってしまう危険もはらんでいます。今こそ、スマホやSNSとの関係を見直してみませんか?

 そこで今週は、2020年に邦訳が刊行されベストセラーとなった『スマホ脳』(アンデシュ・ハンセン 著/新潮社 刊)をご紹介します。教育大国スウェーデン出身の精神科医が、最新研究からスマホの弊害を明らかにし、デジタル社会に警鐘を鳴らした書です。

脳にとってスマホは最新のドラッグ!

 本書の冒頭では、「人間の脳はデジタル社会に適応していない」ということが述べられています。


地球上に現れてから99.9%の時間を、人間は狩猟と採集をして暮らしてきた。私たちの脳は、今でも当時の生活様式に最適化されている。脳はこの1万年変化していない――それが現実なのだ。生物学的に見ると、あなたの脳はまだサバンナで暮らしている。

(『スマホ脳』 9ページ)


 人は、何百万年もかけて発達してきた脳のシステムにより、様々な脳内物質を放出するようになりました。その1つに、「ドーパミン」があります。
 私たちがサバンナに暮らしていた頃、周囲の環境を理解することで、生き延びる可能性が高まりました。そのため、新しい情報を探そうとする本能が備わったといいます。そこで活躍するのがドーパミンです。新しい情報を学ぶとドーパミンが脳内に放出され、もっと詳しく学びたいと思うようになるのです。
 そして現在、新しい情報がスマホから常に流れてくるようになりました。それらは、まるでドラッグのように脳にドーパミンをどんどんと増やし、人を依存させているのです。
 通知が届くと(私の場合は、届いてないにもかかわらず)スマホを見たい衝動にかられるのも納得です。

 著者は、スティーブ・ジョブズやビル・ゲイツなど、絶対的な影響力を持つIT企業のトップたちが、わが子にデジタル・デバイスを与なかったと指摘しています。彼らは、テクノロジーが子どもにどんな影響を与えるのか、熟知していたのでしょう。

SNSを使うほど孤独になっていく

 SNSの登場によって、ボタン1つで世界中の人とコミュニケーションをとれるようになりました。本書では、そんなSNSがはらむ危険性についても触れています。例えば、SNSを使うほど孤独になるという調査結果があるといいます。


2000人近くのアメリカ人を調査したところ、SNSを熱心に利用している人たちのほうが孤独を感じていることがわかった。

(『スマホ脳』 137ページ)


 コミュニケーションを円滑にするためのツールにもかかわらず、使えば使うほどに孤独を感じる――。
 日々スマホに向き合う時間が増えて、リアルな友人と会う時間が少なくなったからでしょうか。それとも、皆が充実していて幸せな日々を過ごしている画像や動画が大量に流れてくることで、それと自分の現状を比べてしまうからでしょうか。
 本書では、こんな興味深い調査結果が紹介されています。

 

フェイスブックとツイッターのユーザーの3分の2が「自分なんかダメだ」と感じている。何をやってもダメだ――だって、自分より賢い人や成功している人がいるという情報を常に差し出されるのだから。特に、見かけは。

(『スマホ脳』 144ページ)


 このように、SNSによって自信をなくしてしまったり、精神状態が悪くなったりする人が増えているようです。こういった状況が、昨年末のオーストラリアでのSNS禁止法案につながったのかもしれません。
 私も、SNSで華やかな暮らしを披露する友人や、おしゃれでキラキラな子育て生活を発信するインフルエンサー、同年代の年収情報に、何度心が折れそうになったことか…。最近、フォローしていた方が、SNSから離れる決意をしたという投稿を目にした時は、「ああ、こんな素敵な人でもSNSに疲れているのだ」と妙に安心しました。
 皆さまも、毎日仕事を頑張っているのにもかかわらず、自分よりはるかに成功している(ようにみえる)SNSの投稿を目にして精神状態を悪くするくらいなら、いっそのことSNSから離れてみてもいいかもしれません。

 『スマホ脳』では、他にも、スマホによる集中力の分散や、スクリーンがメンタルヘルスや睡眠に与える影響、子どもたちの学力低下など、スマホが人間に与える影響について様々な角度から警鐘を鳴らしています。
 著者が最後に提案する、スマホと距離をとるための具体的なアドバイス――例えば「自分のスマホ利用時間を知ろう」「職場で集中力が必要な作業をするときはスマホを手元に置かず、隣の部屋に置いておこう」「スマホからはSNSをアンインストールして、パソコンでだけ使おう」などは、今すぐに実践できるものばかり。
 私自身、本書を読む前は、平均3時間半だったスマホ利用時間が、読んだ後は、平均2時間に減りました。ご自身や会社の同僚、部下、そして子どものスマホ依存に悩む方は、ぜひご一読ください。

(編集部・福尾)

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 「編集部員が選ぶ今週のPick Up本」は、日々多くのビジネス書を読み込み、その内容を要約している編集部員が、これまでに『TOPPOINT』に掲載した本の中から「いま改めてお薦めしたい本」「再読したい名著」をPick Upし、独自の視点から読みどころを紹介するコーナーです。この記事にご興味を持たれた方は、ぜひその本をご購入のうえ通読されることをお薦めします。きっと、あなたにとって“一読の価値ある本”となることでしょう。このコーナーが、読者の皆さまと良書との出合いのきっかけとなれば幸いです。

2021年2月号掲載

スマホ脳

今、大人は1日4時間、10代の若者は4~5時間をスマホに費やす。だが、スティーブ・ジョブズはじめIT企業のトップには、わが子にデジタル・デバイスを与えない人が少なくない。それらが脳に与える影響を、彼らは見抜いているのだ。依存、学力低下、孤独感…。精神科医がスマホの弊害を明らかにし、デジタル社会に警鐘を鳴らす。

著 者:アンデシュ・ハンセン 出版社:新潮社(新潮新書) 発行日:2020年11月
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