2024.2.26

編集部:西田

史上最高値更新の日経平均 投資に失敗しないために過去のバブルから得られる教訓とは?

史上最高値更新の日経平均 投資に失敗しないために過去のバブルから得られる教訓とは?

 2024年2月22日、日経平均株価が終値で3万9098円をつけました。
 バブル期の1989年につけた3万8915円を大きく上回る史上最高値で、SNSでは「史上最高値」「歴史的瞬間」がトレンドワードとなりました。
 今年最初の取引となった1月4日の時点で、日経平均株価の終値は3万3288円でした。わずか50日足らずで2割近くも値上がりしたことになります。
 値上がりの理由としては、様々な要因が挙げられています。中国やロシアの地政学リスクを嫌った世界の投資マネーが日本に向かっている、新NISA開始に伴う国内の買い需要を当て込んだ海外投資家の買いが増加している、などなど…。
 それらの中でも、わかりやすい理由は「買い遅れの恐怖」でしょう。日本経済新聞は、急騰する相場に取り残されることに対する「恐怖」が、株高に弾みをつけている、と指摘しています(「日経平均、最高値に肉薄 急騰の裏に「買い遅れの恐怖」」/日本経済新聞電子版2024年2月16日)。
 実際、昨年来の日本企業の株価上昇を見て「あの時100万円投資していたら、今ごろいくらになっていたんだろう」「今買っておかないと、来年の今ごろどれぐらいの儲けを逃すことになるんだろう」などと考えてしまうと、投資に慣れていない人でも(慣れていないからこそ?)、つい手を出したくなってしまうのではないでしょうか。

 一方で、これほど急激な値上がりを目にしていると、「近いうちに暴落するのでは?」という心配も生まれてくるもの。社会や経済の状況が異なるため単純な比較はできませんが、今後も相場が過熱していけば、約30年前に起こったバブル崩壊のようなことにいずれならないとも限りません。
 そこで今週は、自分の資産を守るために、教養として知っておきたい「バブル」に関する本、『バブルの世界史 ブーム・アンド・バストの法則と教訓』(ウィリアム・クイン、ジョン・D・ターナー 著/日経BP・日本経済新聞出版 刊)をPick Upします。

 まず本書では、バブルを「後に崩落する、大幅な価格上昇の動き」と捉えています。この定義について、本書はこう書いています。

 

たとえば、株などの資産の価格がある期間に大幅に上昇し、その後、大幅に反落することをバブルと呼ぶ。(中略)
この定義から1つ言えるのは、100%の確信をもってバブルと認定できるのは、バブルが弾けた後だけだ、ということだ。

(『バブルの世界史』 11ページ)

 

 ということで、今の相場がバブルかどうかは「弾けてみないとわからない」ようです。
 それなら過去を知ることは何の役にも立たない、と思われるかもしれません。ですが本書は、「だからといって、バブルはまったく予測できないわけではないし、規則性のない現象というわけでもない」といいます。
 例えば、本書はバブルが発生する要素の1つとして、「低金利と緩和的な信用状況」を挙げています。

 

国債や銀行預金など伝統的な安全資産の金利の低さが、リスク資産への投資による「利回り追求」に駆り立てる場合がある。よりリスクの高い資産に資金が流入する結果、それらの資産でバブルが発生しやすくなる。

(『バブルの世界史』 14ページ)

 

 「半導体関連の株に投資すれば、1年で資産が倍になる」「高配当株に投資したら、配当金生活も夢じゃない」などと聞くと、人はそこにリスクがあることからは目を背け、バラ色の未来を想像しがちです。そこに新NISAが始まり、「やらなきゃ損」というような空気が生まれると、積極的に投資したくなってしまうでしょう。
 さらに本書は、バブルをもたらすもう1つの要素として「投機」を挙げています。

 

投機とは、キャピタルゲインの確保だけを目的に、後日、資産を売却する(ないし買い戻す)ことを前提に資産を購入(売却)する行為を指す。(中略)
将来の値上がりを期待して、資産を購入する投資家は常にいるものだ。だが、バブル期には、大勢の初心者が投機家になる。その多くは、相場の勢いだけで売買し、価格が上がったときに買い、下がっているときに売っている。

(『バブルの世界史』 15ページ)

 

 人には、自分に不運な出来事が起こる可能性を低く見積もる「楽観バイアス」があります。「この株価の状況なら、明日もきっと上がるだろう」と思って株を買おうとした時には、本書の「大勢の初心者」の1人に自分がなっているのではないか、と振り返ってみてはいかがでしょうか。

 本書では、これらの他にも、政府の政策がバブルの引き金を引き得ることや、バブルが終わる理由など、今の日本にとっても示唆的な指摘が数多くなされています。
 中でも興味深いのは、市場全体の値動きに連動するような「パッシブ型資産運用」に対する懸念です。
 こうした投資商品は、個別の株に集中投資するよりも暴落のリスクを抑えられるように思えます。新NISAでも、つみたて投資枠で全世界の株式に広く分散投資する商品が人気を得るなど、パッシブ型の資産運用は資産形成の「王道」のように感じられます。
 ですが本書によると、バブルとの関係では、このパッシブ型の資産運用にも懸念があるというのです。

 

株価指数の動きに追従するパッシブ型の運用が増加すると、バブルで株価が上昇しているセクターや資産に通常以上に多くの資金が集まることになる。言い換えれば、パッシブ型資産運用は将来、バブルという火事にさらなる燃料を投下する可能性がある。

(『バブルの世界史』 288ページ)

 

 あれもこれもバブルの原因になり得るなら、どの株も買えないじゃないか、という気がしてきます。
 ですが、これらの一連の記述から投資についての教訓を読み取るとするなら、投資資産はあくまで「リスク資産」であるという、しごく当たり前のことでしょう。
 余裕資金で運用する、長期的な視点で投資する、自分よりも儲かっている人をうらやまない…。そうした基本を愚直に守ることが、突然の暴落にも慌てないメンタルと資産ポートフォリオを築くことにつながるのではないでしょうか。
 なお、TOPPOINTライブラリーでは、こうした投資の考え方やテクニックを解説した本として、『JUST KEEP BUYING 自動的に富が増え続ける「お金」と「時間」の法則』(ニック・マジューリ 著/ダイヤモンド社 刊)などを紹介しています。
 併せて読むことで、より自身の金融リテラシーを高めることにつながるでしょう。

(編集部・西田)

*  *  *

 「編集部員が選ぶ今週のPick Up本」は、日々多くのビジネス書を読み込み、その内容を要約している編集部員が、これまでに『TOPPOINT』に掲載した本の中から「いま改めてお薦めしたい本」「再読したい名著」をPick Upし、独自の視点から読みどころを紹介するコーナーです。この記事にご興味を持たれた方は、ぜひその本をご購入のうえ通読されることをお薦めします。きっと、あなたにとって“一読の価値ある本”となることでしょう。このコーナーが、読者の皆さまと良書との出合いのきっかけとなれば幸いです。

2023年6月号掲載

バブルの世界史 ブーム・アンド・バストの法則と教訓

金融史・経済史の研究者が、なぜバブルが生じ、弾けるのかを分析した書である。「市場性」「通貨と信用」「投機」。この3要素を軸に、急騰と反落のメカニズムを解明し、普遍的な法則を導き出す。著者によると、ITバブルやサブプライム・バブルなど、昨今はバブルの頻度が増している。そうした中、将来に備える上で示唆に富む1冊だ。

著 者:ウィリアム・クイン、ジョン・D・ターナー 出版社:日経BP・日本経済新聞出版 発行日:2023年3月
閉じる

ネット書店へのリンクにはアフィリエイトプログラムを利用しています。

このPick Up本を読んだ方は、
他にこんな記事にも興味を持たれています。

一覧ページに戻る