2024.12.16

編集部:油屋

日本の会員数1000万人 話題作を次々生み出すNetflixの“普通じゃない”企業文化とは?

日本の会員数1000万人 話題作を次々生み出すNetflixの“普通じゃない”企業文化とは?

 2024〜2025年の年末年始は、12月28日(土)から2025年1月5日(日)までの9連休とする企業が多いようです。

 長期の休みを機に、国内外へ旅行に出かける人もいれば、家でゆっくりする人もいることでしょう。中には、Netflix(ネットフリックス)やU-NEXTといった動画配信サービスを利用して過ごす人もいるかもしれません。特に今年は、実話を基に制作されたネットフリックスのオリジナルドラマ「地面師たち」が大きな話題となったことから、この休みを機に、一気見しようと思っている方も少なくないのではないでしょうか。

 現在、日本での会員数が1000万を突破し、勢いに乗るネットフリックス。今回は、そんな同社の成長の原動力を創業者が語った、『NO RULES 世界一「自由」な会社、NETFLIX』(リード・ヘイスティングス、エリン・メイヤー 著/日経BP・日本経済新聞出版本部 刊)をご紹介します。

ネットフリックスが世の中の変化に対応できた理由

 インターネット・ストリーミングサービスを提供し、海外190カ国以上に会員を擁するネットフリックス。ただ、1998年の創業当初は郵送DVDレンタル事業を主軸としていました。

 しかも、2000年初頭には同社の事業は不調で、当時、ビデオ・DVDレンタルチェーンの業界最大手だったブロックバスターに身売りしようとしていたといいます。結果的にそれは破談となり、世の中の変化に合わせて事業転換し、ネットフリックスは今の動画配信サービスを手掛けるようになります。一方、ブロックバスターはDVDレンタル事業からうまく転換できず、2010年に破産の憂き目に遭いました。

 ブロックバスターに限らず、コダック、ノキアなど、業界の大手ながら世の中の変化に適応できず、苦境に立たされた企業は少なくありません。なぜ、ネットフリックスは変化に対応できたのでしょうか?

 共同創業者の1人、リード・ヘイスティング氏は次のように語っています。

 

ネットフリックスにあって、ブロックバスターにはないものがひとつだけあった。プロセス(手続き)より社員を重視する、効率よりイノベーションを重んじる、そしてほとんど制約のないカルチャーである。

(『NO RULES』7ページ)

 

 つまり、社員とイノベーションを重視し、組織カルチャーを柔軟性あるものにしていた結果、今のネットフリックスがあるということです。

重視する2つの土台

 では、ネットフリックスは具体的に、どのようなことに取り組んだのでしょうか?

 本書によれば、社員の幸福度や意欲を高めるため、社員に「自由」を与え、質の高い判断ができるようにしたといいます。ただし、社員の自由度を高くするために、まずは土台として次の2つの要素を強化したそうです。

 

「+」能力密度を高める

一般的に企業がルールや管理プロセスを設けるのは、社員のだらしない行為、職業人にふさわしくない行為、あるいは無責任な行為を防ぐためだ。だが(中略)優秀な人材で組織をつくれば、コントロールの大部分は不要になる。能力密度が高いほど、社員に大きな自由を与えることができる。

(『NO RULES』18ページ)

 

「+」率直さを高める

優秀な人材はお互いからとても多くを学ぶことができる。(中略)優秀な社員が当たり前のようにフィードバックをするようになると、全員のパフォーマンスの質が高まるとともにお互いに対して暗黙の責任を負うようになり、従来型のルールはますます不要になる。

(『NO RULES』18〜19ページ)

 

 そしてネットフリックスは、能力密度と率直さを高めることに加え、企業側が社員をコントロールすることを減らし、自由を与えようと努めているそうです。その一例として、出張規程や休暇規程などの社内規程の廃止を挙げています。

 社内規程の廃止と聞くと、「サボる人が出ないか」「不正が起こるんじゃないか」と不安になる管理職の方もいるかもしれません。しかし著者らはこう述べています。

 

コントロールを撤廃することで、「フリーダム&レスポンシビリティ(自由と責任)」のカルチャーが生まれる。それが一流の人材を引き寄せ、さらにコントロールを撤廃することが可能になる。そうしたことが積み重なると、他の会社がおよそ太刀打ちできないようなスピード感とイノベーションが生まれる。

(『NO RULES』19〜20ページ)

 

 いくら優秀な社員とはいえ、彼らに自由を与えることはかなり勇気がいることと思えます。ただ、ネットフリックスの躍進を見ると、この取り組みが効果を生んでいることもわかります。社内からイノベーションが起きなくて悩む日本企業にとり、ネットフリックスの取り組みは社内文化を見直す際の参考になるかもしれません。

最高の人材には、最高の報酬を

 著者らは本書で、「能力密度を高める」「率直さを認める」「コントロールを撤廃する」という3つのステップの具体策について詳説しています。

 例えば、「能力密度を高める」取り組みの1つに、「ロックスターにふさわしい最高水準の報酬を提示する」というものがあります。ここでいうロックスターとは、その分野で最も優秀な人材のこと。著者らによれば、クリエイティブ系の職種においては、「トップクラスの能力は凡人のそれを優に10倍は超える」とのこと。そこでネットフリックスでは、多くの平均的な人材を雇用する代わりに、トップクラスの人材を少数雇うことにしたといいます。

 

クリエイティブ職種については例外なく、凡庸な人材を1ダース雇う代わりに、最高の人材に「個人における最高水準の報酬」を払うことにした。
(中略)そしてこの方法はすばらしい成功を収めてきた。イノベーションの速度と成果は飛躍的に高まった。

(『NO RULES』147ページ)

 

 実際、日本のネットフリックスは、「Mother」や「最高の離婚」など、数々の人気ドラマの脚本を手掛けてきた坂元裕二氏と2023年に契約を締結、同年11月に映画「クレイジークルーズ」を独占配信しています。

 また、今年7月には、テレビ・映画プロデューサーの磯山晶氏とも契約を締結しています。磯山氏といえば、今年話題になった「不適切にもほどがある!」をはじめ、数多くのテレビドラマや映画に携わってきた人物です。

 今後もしかすると、ネットフリックスの文化や条件に魅力を感じた日本のテレビ・映画業界のトップ人材が活躍の場をそちらに移し、人々を惹きつける作品を次々と配信する、といった動きが続いていくのかもしれません。

 2015年9月1日に日本でのサービスを開始したネットフリックス。そこからわずか10年足らずで、1000万人も利用するサービスへと成長を遂げました。

 そんなネットフリックスがいかにして今の地位を得たのか、同社の戦略、企業の内側が『NO RULES 世界一「自由」な会社、NETFLIX』では赤裸々に語られています。ネットフリックスをよく利用されるという方には、特に手に取っていただきたい1冊です。

(編集部・油屋)

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 「編集部員が選ぶ今週のPick Up本」は、日々多くのビジネス書を読み込み、その内容を要約している編集部員が、これまでに『TOPPOINT』に掲載した本の中から「いま改めてお薦めしたい本」「再読したい名著」をPick Upし、独自の視点から読みどころを紹介するコーナーです。この記事にご興味を持たれた方は、ぜひその本をご購入のうえ通読されることをお薦めします。きっと、あなたにとって“一読の価値ある本”となることでしょう。このコーナーが、読者の皆さまと良書との出合いのきっかけとなれば幸いです。

2021年1月号掲載

NO RULES 世界一「自由」な会社、NETFLIX

190カ国に、1億6000万人以上の会員を擁するネットフリックス。今やエンタテインメント業界の大御所だが、20年前、創業時は小さなベンチャー企業だった。なぜ、これほどまでに成長できたのか? それを可能にした“普通じゃない”経営手法 ――「脱ルール」のカルチャーを、世界一「自由」な会社の創業者が初めて明かす。

著 者:リード・ヘイスティングス、エリン・メイヤー 出版社:日経BP・日本経済新聞出版本部 発行日:2020年10月
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