2026.4.27

編集部:福尾

悩みの多くは手放せる? ビジネスパーソンが注目するストア哲学で、心穏やかに生きる方法

悩みの多くは手放せる? ビジネスパーソンが注目するストア哲学で、心穏やかに生きる方法

ビジネスパーソンに注目されるストア哲学とは?

 本日4月27日は「哲学の日」です。
 紀元前399年のこの日に、古代ギリシアの哲学者ソクラテスが毒杯を仰いでこの世を去ったという説に由来します。
 折しも世の中は、ゴールデンウィークの入り口。日々の忙しさから少し距離を置けるこの時期は、効率や成果ではなく、「自分はどう生きたいのか」という問いに目を向けるまたとない機会でもあります。

 この問いを考える手がかりとなるのが、約2000年前から受け継がれてきた哲学の知恵です。なかでも「ストイック」の語源としても知られる「ストア哲学」は、いま改めて関心を集めています。ストア哲学とは「理性と徳を重んじ、感情に惑わされずに生きることを追求する哲学」です。不確実性への対応やストレス管理、倫理的な意思決定などに有用であるとして、世界中のビジネスパーソンから注目されています。

 そこで今週Pick Upするのは、ストア哲学のエッセンスを現代の生活に引き寄せてわかりやすく伝える1冊『心穏やかに生きる哲学 ストア派に学ぶストレスフルな時代を生きる考え方』(ブリジッド・ディレイニー 著/ディスカヴァー・トゥエンティワン 刊)です。哲学書というと抽象的で難解な議論を想像するかもしれませんが、本書は日常の具体的な場面に即して「どう考えればよいか」をわかりやすく示してくれます。

コントロールできること・できないこと

 ストア哲学の核にあるのは、「自分でコントロールできること」と「できないこと」を認識するという考え方です。この本の著者ブリジッド・ディレイニー氏は、次のように説明します。

 

ストア哲学を私なりに解釈すると、私たちが完全にコントロールできるのは、次の3つだけです。

  • 1. 私たちの品性
  • 2. 私たちの反応(場合によっては私たちの行動も。ただしその結果は含まれない)
  • 3. 他者への対応のしかた

その他のことは、部分的に私たちがコントロールできるものか、あるいは全く私たちの手には届かないものです。

(『心穏やかに生きる哲学』 75ページ)


 この視点を日常に当てはめると、世界の見え方が変わります。

 例えば、思い通りにいかない出来事に直面したとき、私たちは動揺したりがっかりしたりして心にストレスが生じます。しかし一歩引いて、「それは、自分の品性、行動と反応、他者への対応のしかたと関係があるか?」と問い直し、コントロールできることとできないことを見極める。すると、自分の力の及ばない事柄であることに気づき、心が穏やかになるといいます。

 事故や病気、人との出会い、仕事の評価、物価や国際情勢…。私たちは多くを自分で動かせると錯覚しがちですが、実際にはコントロールできないものの方が多いのです。その前提に立つと、思い通りにならない事柄に無駄なエネルギーを注がずに済みます。結果として、悩みの種そのものが減っていくというわけです。

 こうしたプロセスは「コントロールテスト」と呼ばれ、著者は行動を起こす前に活用することをすすめています。このテストにより、自分がコントロールできるものに集中し、そこで最大限にエネルギーを活用することができるといいます。

心穏やかに生きるために

 さらに、『心穏やかに生きる哲学』が伝えるのは、ストレスへの対応だけではありません。人生には、時に有頂天になるような出来事も起こります。

 著者のディレイニー氏は、自分の過去の作品がNetflixでドラマ化されると決まった時、喜びのあまりすっかり舞い上がってしまい、極度の興奮状態が続いたといいます。しかしその後は、その対極の状態となり、気分の落ち込みが長く続いてしまったそうです。

 こうした状況にもストア哲学は役に立ちます。
 ストア派は心の静けさを何よりも重んじ、「不動心(アタラクシア)」と名前をつけています。これは、「揺るぎない落ち着きで心が澄んでいる状態であり、苦悩や不安から解放されている」という意味です。どうすれば不動心が手に入るのでしょうか?

 そのヒントとして本書が引用しているのが、ローマ皇帝にしてストア派の哲学者マルクス・アウレリウスの言葉です。

 

「他者の言葉、考え、行いを気にするのをやめると、心は穏やかになる。自分の行いだけを心に留めること」

(『心穏やかに生きる哲学』 157ページ)

 

 良くも悪くも、外部の評価に意識を奪われるほど、心は揺れ動きます。逆に、「自分の恐れや失敗や他の人々の考えを払いのければ、あらゆることがもっと気楽で愉快になる」と著者は言います。つまり、不動心を獲得する手段は、自分の内面にあるということです。引用した言葉は2000年も前のものですが、今を生きる私たちにも大いに共感できるのではないでしょうか。

 実際、私もストア哲学に倣い、思い切ってつい見てしまうSNSのアカウントを削除してみました。今のところ、SNSを見られないデメリットよりも、自分の心の穏やかさが保たれるメリットの方がはるかに多いと感じています。
 また、2026年3月2日公開の「今週のPick Up本」でご紹介した20分の瞑想も、不動心を手に入れるのに役立ちそうです。

 本書は、他にも「死を意識して生きる」「災難に対処する」といったストア派の知恵を、無理なく日常に取り入れられる形で紹介しています。詳しくは、ぜひTOPPOINTライブラリーに収録されている要約をご覧ください。

 今年のゴールデンウィークは、物価高やガソリン価格高騰の影響もあり、旅行やレジャーに出かける人は少ないともいわれています。この機会に、自分の内側に目を向けるストア派哲学に触れてみてはいかがでしょうか。『心穏やかに生きる哲学』はその入り口として最適です。特に、解決できない悩みや不安が常にある、人と比べて落ち込むことが多いという方はぜひご一読ください。

 本書を読んで、ストア哲学をさらに深めたいという方は、TOPPOINTライブラリーに収録されているセネカ『生の短さについて 他二篇』やマルクス・アウレリウス『自省録』(いずれも岩波書店 刊)もおすすめです。

(編集部・福尾)

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 「編集部員が選ぶ今週のPick Up本」は、日々多くのビジネス書を読み込み、その内容を要約している編集部員が、これまでに『TOPPOINT』に掲載した本の中から「いま改めてお薦めしたい本」「再読したい名著」をPick Upし、独自の視点から読みどころを紹介するコーナーです。この記事にご興味を持たれた方は、ぜひその本をご購入のうえ通読されることをお薦めします。きっと、あなたにとって“一読の価値ある本”となることでしょう。このコーナーが、読者の皆さまと良書との出合いのきっかけとなれば幸いです。

2025年5月号掲載

心穏やかに生きる哲学 ストア派に学ぶストレスフルな時代を生きる考え方

パンデミックやSNSにおける誹謗中傷など、ストレスの種が溢れる昨今。そんな時代に穏やかな心で生きるヒントを、古代ギリシャで生まれた「ストア哲学」に求めた書。死を意識して生きる、自分にコントロールできるものを見極める…。紹介される知恵の数々は、人の悩みの本質が2000年もの間変わっていないことを教えてくれる。

著 者:ブリジッド・ディレイニー 出版社:ディスカヴァー・トゥエンティワン 発行日:2024年8月
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