2023.11.27

編集部:西田

「オッサン」社会を乗り越えろ! 劣化する組織に呑み込まれないために

「オッサン」社会を乗り越えろ! 劣化する組織に呑み込まれないために

 政治の世界で、不祥事が相次いでいます。
 教育を担当する文部科学省の政務官(50代)が不倫していた。法律をつかさどる法務省の副大臣(50代)が公職選挙法違反の行為を人に勧めていた。税金を扱う財務省の副大臣(60代)が税金を滞納していた――。
 「よりにもよって、その立場でこの不祥事?」と言いたくなる事案の連続に、一体最近の政治家はどうなっているんだ…と思いながら編集部の書架を眺めていたところ、今週Pick Upする、『劣化するオッサン社会の処方箋 なぜ一流は三流に牛耳られるのか』(山口 周 著/光文社 刊)が目にとまりました。本書を開くと、次の一節に出会いました。

 

皆さんもよくご存じのとおり、昨今の日本では、50歳を超えるような、いわゆる「いい年をしたオッサン」による不祥事が後を絶ちません。

(『劣化するオッサン社会の処方箋』 15ページ)

 

 今年出版された本と言われても信じてしまいそうな記述ですが、本書の刊行は2018年。著者の山口周氏が不祥事の例として挙げるのは、日大アメフト部の監督による暴行指示、財務省事務次官によるセクハラ、森友・加計問題に関する情報の改竄・隠蔽などです。当時、いずれも大きく社会を騒がせました。
 少なくとも5年前には、「いい年をしたオッサン」の問題が指摘されていたことがわかります。しかし、その後5年経っても、同じような不祥事が繰り返されている。そこにこの問題の根深さがあると気づき、「最近の政治家は…」と安直な言葉で片づけようとしていた自分を反省しました。

 なお、本書で山口氏が言う「オッサン」は、「中高年の男性=オジサン」全体を指すものではないことには、注意が必要です。山口氏は、「オッサン」を「過去の成功体験に執着し、既得権益を手放さない」「階層序列の意識が強く、目上の者に媚び、目下の者を軽く見る」などの行動様式・思考様式をもった人物と定義した上で、次のように述べます。

 

中高年の男性として分類される人であっても、この「人物像」に該当しない人は数多く存在します。これを逆にいえば、いわゆる「オジサン」に該当しない年代の人であっても「オッサン化」している人がいくらでも見つけられるということでもあります。

(『劣化するオッサン社会の処方箋』 10ページ)

 

 不祥事を起こしている「オッサン」と同年代の男性だからといって必要以上に悲観しなくてもよいし、逆に40代以下あるいは女性だからといって安心せず、彼らの言行を見て自分も同類になっていないか顧みる必要があるということです。

 さて、「オッサン」はなぜここまで劣化したのか?
 山口氏はこの問題について、世代論と組織論という2つの観点から解説を行っています。そのうち、後者の組織論を読むと、絶望的な気分になります。「組織のリーダーは構造的・宿命的に経時劣化する」というのです。

 

まず、二流の人間は自分が本当は二流であり、誰が一流なのかを知っています。
一流の人間はそもそも人を格付けする、あるいは人を押しのけて権力を握ることにあまり興味がないので、自分や他人が何流かということをはなから考えません。
三流の人間は、往々にして周囲にいる二流の人間のことを一流だと勘違いしており、自分も「いまは二流だが頑張ればいつかはああなれる」と考えて、二流の周りをヨイショしながらウロチョロする一方で、本物の一流については、自分のモノサシでは測れない、よくわからない人たちだと考えています。
この構造を人数の比率で考えれば、一流は二流より圧倒的に少なく、二流は三流より圧倒的に少ない。(中略)
したがって、「数」がパワーとなる現代の市場や組織において、構造的に最初に大きな権力を得るのは、いつも大量にいる三流から支持される二流ということになります。

(『劣化するオッサン社会の処方箋』 38~39ページ)

 

 この時点ですでに悲劇的ですが、この後さらに、①権力を維持しようとする二流リーダーが一流をおそれて排除し、②自分にとって扱いやすい三流フォロワーを重用、③そして二流リーダーの引退の後、次の世代では三流がリーダーになり、④その周りに集まるのはさらにレベルの低い三流になる、という末路が、本書では語られていきます。

 本稿の冒頭で政治家の不祥事を取り上げましたが、政治の世界は、先述の引用にある「数」がパワーとなる組織の最たるものの1つといえるでしょう。果たして今の政治は一流が導いているのか、数を味方につけた二流リーダーの時代なのか、それともさらに世代が交代し、三流が中枢にいるのか。
 政治の世界は、いまや劣化した「オッサン」の巣窟になってしまったのでは――そんな疑念を払拭するような、良識ある行動が政治家には求められます。

 どんな組織のリーダーも構造的に劣化が避けられない、と本書は言います。ならば、何も打つ手はないのか。この点は政治に限らず、ビジネスパーソンとしても気になるところでしょう。
 山口氏は対抗手段として、40代以下の世代が積極的に権力者に意見し(オピニオン)、納得できなければ転職などの手段によってその影響下から脱出する(エグジット)ことを挙げます。その上で、それを不安なく行うためにしておくべきことを、次のように書いています。

 

結局のところ、汎用性の高いスキルや知識などの「人的資本」と、信用や評判といった「社会資本」を厚くすることで、自分の「モビリティ」を高めるしかありません。

(『劣化するオッサン社会の処方箋』 59ページ)

 

 モビリティを高めるとは、自分の価値を働く場所によって左右されないようにすることを意味します。この指摘は、若手だけでなく中堅や管理職、現在組織を率いる立場にある人にとっても、決して避けて通れない問題です。
 人生100年時代といわれる今日。個人としては60代・70代になって別の会社で働くことも珍しくなくなります。その際、自身が蓄えてきた人的資本と社会資本は、仕事の内容と質に直結します。
 また、組織としては、人的資本を高めることに理解があり、実際にそのための取り組みを行っている職場は、労働者側から選ばれる可能性が高まるでしょう。近年、人的資本経営の重要性が説かれていますが、社員の「モビリティ」向上に力を入れることが、結果的によい人材の確保や定着にもつながると考えられます。

 山口氏は、日本で既存の社会や組織が大きく変わった例として「明治維新」と「太平洋戦争の終戦」を挙げ、両者の間に約80年という時間があったことに注目しています。

 

この80年という時間には、それなりの必然性があったように思います。
つまり、80年というのは、一度ガラガラポンしてリーダーシップの刷新を行った組織や社会が、再び先述したロジックによって劣化するのに十分な時間だということです。(中略)
では、太平洋戦争の終戦から80年後はいつになるのかというと、それは2025年ということになります。
つまり、いま私たちが生きている社会は、太平洋戦争終戦時の第二次ガラガラポン革命に続く、第三次ガラガラポン革命の前夜を迎えつつある可能性がある、ということです。

(『劣化するオッサン社会の処方箋』 51・54ページ)

 

 ガラガラポンされた世界では、いったん「オッサン」は淘汰されます。
 いざガラガラポン革命が起こった時にうろたえないために、個人と組織が今から取り組んでおくべきことは多々あります。本書で山口氏は、その具体的な内容について、様々な提言を行っています。
 「オッサン」になりたくない人に、また職場で「オッサン」と対峙する若手に、そして職場の「オッサン」化に悩む管理職に、ぜひ一読をおすすめしたい1冊です。

(編集部・西田)

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 「編集部員が選ぶ今週のPick Up本」は、日々多くのビジネス書を読み込み、その内容を要約している編集部員が、これまでに『TOPPOINT』に掲載した本の中から「いま改めてお薦めしたい本」「再読したい名著」をPick Upし、独自の視点から読みどころを紹介するコーナーです。この記事にご興味を持たれた方は、ぜひその本をご購入のうえ通読されることをお薦めします。きっと、あなたにとって“一読の価値ある本”となることでしょう。このコーナーが、読者の皆さまと良書との出合いのきっかけとなれば幸いです。

2018年11月号掲載

劣化するオッサン社会の処方箋 なぜ一流は三流に牛耳られるのか

日大アメフト部監督による暴行指示、財務省事務次官のセクハラ、財務省による森友・加計問題に関する情報の改竄・隠蔽…。最近、50~60代の、いいオトナによる不祥事が相次ぐ。なぜか。「オッサン」が劣化した理由を、その世代の行動様式・思考様式を切り口に考察、若者がオッサンに対抗するための“処方箋”も提示する。

著 者:山口 周 出版社:光文社(光文社新書) 発行日:2018年9月
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