2020年12月号掲載

人新世の「資本論」

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著者紹介

概要

「人新世」とは、人間の経済活動が地球を破壊する、新たな時代のこと。実際、「100年に一度」級の異常気象が毎年、世界中で起きている。地球環境を守るには、経済成長優先の資本主義を改めねばならない。そのためのカギとなる、晩期マルクスの思想 ―― 平等で持続可能な社会を目指す「脱成長型経済」の考え方を読み説く。

要約

気候変動と資本主義

 近代化による経済成長 ―― 。それは、私たちに豊かな生活を約束していたはずだった。

 ところが、今日の環境危機によって明らかになりつつあるのは、経済成長が人類の繁栄の基盤を切り崩しつつあるという事実である。

地球は「人新世」の年代に入った

 人類の経済活動が地球に与えた影響があまりに大きいため、ノーベル化学賞受賞者のパウル・クルッツェンは、地質学的に見て、地球は新たな年代に突入したと指摘。そしてそれを「人新世」(Anthropocene)と名付けた。人間の活動の痕跡が、地球の表面を覆いつくした年代という意味だ。

 実際、ビルや工場などが地表を埋めつくし、海洋にはマイクロ・プラスチックが大量に浮遊する。なかでも激増したのが、大気中の二酸化炭素だ。

 それに伴う気候危機は、すでに始まっている。かつてならば「100年に一度」と呼ばれた類の異常気象が毎年、世界各地で起きるようになった。

 なぜ、このような事態になったのか。その理由を明らかにするには、資本主義のグローバル化と環境危機の関係性を理解しなくてはならない。

犠牲を不可視化する外部化社会

 大量生産・大量消費型の社会。それは先進国の人々の豊かな生活を実現する。だがその裏で、グローバル・サウス(グローバル化によって被害を受ける領域・住民)にその代償を押しつけている。

 例えば、ファスト・ファッションの洋服を作るのは、劣悪な条件で働くバングラデシュの労働者だ。服の原料である綿花を栽培するのは、40℃の酷暑の中で作業を行うインドの貧しい農民である。

 社会学者シュテファン・レーセニッヒは、この例のように、代償を遠くに転嫁し、不可視化することが、先進国社会の「豊かさ」には不可欠だと指摘。これを「外部化社会」と呼び、批判する。

 外部化社会は、絶えず外部性を作り出し、そこに様々な負担を転嫁してきた。私たちの社会は、そうすることでのみ、繁栄してきたのである。

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