今年度も、残り2週間となりました。
4月からは新しい職場、新しい人間関係の下で仕事を始める、という方もいらっしゃるのではないでしょうか。
新たな環境への希望はもちろんあるでしょうが、不安もまたつきものです。果たしてうまくやっていけるのか。きちんと結果を出せるのか。失敗したらどうしよう…。
そんな悩みを抱えている方に、読んでいただきたい本があります。それが、今週Pick Upする『マインドセット 「やればできる!」の研究』(キャロル・S・ドゥエック 著/草思社 刊)。あのビル・ゲイツも絶賛したという世界的ベストセラーです。
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スタンフォード大学の心理学教授である著者によれば、マインドセットとは「心のあり方」のこと。そして、マインドセットには次の2つがあるといいます。
- 「硬直マインドセット」:自分の能力は固定したもので変わらない
- 「しなやかマインドセット」:人間の資質は努力次第で伸ばすことができる
こう書かれると、たいていの人は「自分はしなやかマインドセットだ」と思うかもしれません。ですが、次のようなことに心当たりはないでしょうか。
- ・間違えたり失敗したりすることが怖い
- ・有能にみられたい、ダメな奴だと思われたくない
- ・他の人が成功しているところを見ると、自分の立場が危うくなるのではないかと不安になる
これらに当てはまるようなら、実は「硬直マインドセット」に囚われているかもしれません。著者は、2つのマインドセットを対比してこう解説しています。
能力を固定的にとらえる世界では、自分の賢さや才能を証明できれば成功、自分の価値を確認できればそれが成功だ。一方、能力は伸ばせるものと考える世界では、頑張って新しいことを習得できれば成功。自分を成長させることができれば成功なのだ。
能力を固定的に考える世界では、つまずいたらそれでもう失敗。落第点を取る、試合に負ける、会社をクビになる、人から拒絶される――そうしたことはすべて、頭が悪くて才能がない証拠だ。それに対し、能力は伸ばせると考える世界では、成長できなければ失敗。自分が大切だと思うものを追求しないこと、可能性を十分に発揮できないことこそが失敗となる。(『マインドセット』 23ページ)
つまり、上に挙げたようなことはどれも、「能力を固定的にとらえる」硬直マインドセットの特徴なのです。そして、本書の記述から想像できるように、硬直マインドセットと「能力は伸ばせるものと考える」しなやかマインドセットとでは、自分の成長に大きな差が出ます。
できれば、しなやかマインドセットを身につけたいものです。それは、どうすれば獲得できるのでしょうか。
本書は、その具体的なアドバイスを示しています。一例を挙げると、「困難に打ち克って何かを学ぶたびに、脳に新たな回路が形成されていく様子を思い描こう」「その体験から何を学んだか、あるいは学べるか? どうすればそれを成長に結びつけることができるか? そう考える習慣を身につけよう」「いつもやりたいと思っていながら、うまくできる自信がなくて、やらずにいたことはないだろうか。それを実行に移してみよう」…。
こうしたことを念頭に置いて新年度に臨めば、新しい環境下でより積極的な挑戦や、自分の成長につながる行動を起こせるのではないでしょうか。
ただ、難しいのは、「失敗は成長の糧になる」と頭でわかっていることと、実際に起きた失敗を前向きに受け止めることの間には、大きな隔たりがあるということです。
前述の通り、マインドセットとは「心のあり方」です。これまでの人生で長い時間をかけて築き上げてきた自分の「信念」のようなものであり、それを一朝一夕に改めることは簡単ではありません。
だとすると、しなやかマインドセットを身につけるに当たっても、「しなやかマインドセット的発想」で臨むことが必要ではないでしょうか。
仕事で失敗した。その失敗に、自分はやっぱりダメだと落ち込んでしまった。そんな時に、また硬直マインドセットに陥っている――と自分で気づけたなら、失敗自体の振り返りとともに、なぜ硬直マインドセットに囚われてしまったのか、しなやかマインドセットになるために成長した点はないか、そうしたことも考えてみてはいかがでしょうか。
もしかしたら、おいしいものを食べたり軽く散歩をしたりという気分転換を挟むことで、落ち込みから抜け出せることに気づくかもしれません。あるいは、前回は1週間も引きずったが、今回は一晩寝れば次に目を向けることができたと気づくかもしれません。
そうした小さな気づきの体験を積み重ねることで、しなやかマインドセットへの道も近づいてくるのではないでしょうか。
これまで硬直マインドセットに囚われて生きてきた人にとって、しなやかマインドセットに切り替えるのは容易ではありません。
とはいえ、「自分はしなやかマインドセットになれる」と考えることは、それだけで既に硬直マインドセットから脱しているともいえます。
『マインドセット』は、自分の可能性に気づき、仕事を通じて成長し続けるために、手元に置いて折に触れ読み返していただきたい1冊です。
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ところで、本書ではリーダーのマインドセットがいかに組織の命運を左右するかについても示しています。2001年に巨額の不正会計事件を起こして倒産したエンロン社などの事例を取り上げ、指導者が硬直マインドセットの持ち主であった場合、往々にして会社を危機に追い込むことになる、と著者はいいます。
個々の社員がしなやかマインドセットを手に入れようとどれだけ努力しても、組織内にそれを認める文化がなければ、十分な成果は見込めません。
特に、新しい環境で働こうとする人が、今後積極的に挑戦し、新しいことを学んでいこうと考えるかどうかは、その「初動」の雰囲気が命といってもいいでしょう。
そうした意味で本書は、新年度に新たなチームを率いることになる管理職の方々にも、今月中にぜひ一読をお勧めします。
しなやかなマインドセットの根底にあるのは、「人は変われる」という信念である。
(『マインドセット』 302ページ)
この信念を持って、自分とチームを導いていく。その姿を皆に見せることで、チームはよりよいスタートダッシュを決められるでしょう。
(編集部・西田)
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「編集部員が選ぶ今週のPick Up本」は、日々多くのビジネス書を読み込み、その内容を要約している編集部員が、これまでに『TOPPOINT』に掲載した本の中から「いま改めてお薦めしたい本」「再読したい名著」をPick Upし、独自の視点から読みどころを紹介するコーナーです。この記事にご興味を持たれた方は、ぜひその本をご購入のうえ通読されることをお薦めします。きっと、あなたにとって“一読の価値ある本”となることでしょう。このコーナーが、読者の皆さまと良書との出合いのきっかけとなれば幸いです。
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