休日に読書をしていた際、次の言葉に出合いました。
「モテない人は自分の過去を語り、モテる人は相手との未来を語る」
イタリアの作家の言葉だそうですが、なるほど確かに、「学生時代はモテたんだ」「昔は忙しくて仕事ばっかりしていたんだ」といった過去の話(特に自慢話)は、聞き手を退屈させることが少なくありません。一方で、「今度、一緒に〇〇をしたい」「これからは〇〇に挑戦してみたいんだ」といった未来の話には、人を惹きつける力があります。
これはビジネスの場面でも同じではないでしょうか。
リーダーが過去の話よりも長期的な目標や未来のビジョンについて語る方が、部下の心を動かし、共感や期待を生むことに繋がるように思えます。
また、前回の「今週のPick Up本」(新年度に知っておきたい若手社員の育成論。優秀な人ほど辞める理由は“ゆるい職場”にあった!)で、「働き方改革に加えて、『育て方改革』も必要」という著者の言葉を紹介しました。未来志向の言葉は、若手社員のやる気を引き出し、育てる上で大いに効果を発揮することでしょう。
では、明確で説得力のあるビジョンを語るには、どうすればいいのでしょうか?
今週は、その方法を学ぶことができる本、『自分の能力が変わるカリフォルニア大学バークレー校超人気の授業』(アレックス・ブダク 著/サンマーク出版 刊)をPick Upします。
「長期的で野心的な時間軸」でビジョンを描く
本書は、社会起業家のアレックス・ブダク氏が講師を務める、世界屈指の大学・カリフォルニア大学の人気授業をまとめたものです。
本書でブダク氏は、リーダーが周囲の人を引き込むために、「長期的で野心的な時間軸」で考えることを勧めています。
ビジョンを本当に説得力あるものにするには、それを実現する目標の期間を、1年や5年ではなく数十年単位でとらえるのだ。(中略)
このようなスケールでビジョンを描くことで、全員が短期的な視点にとらわれずに長期的な思考を受け入れ、同じ未来に向けて決断し、行動できるようになる。(『自分の能力が変わるカリフォルニア大学バークレー校超人気の授業』160ページ)
ブダク氏はこの好例として、次の2社の標語を紹介しています。
- ・スペースX(イーロン・マスク氏率いる航空宇宙メーカー)
「火星での有人探査と定住を実現する」
- ・ボルボ(スウェーデン発祥の自動車ブランド)
「ボルボがこれから製造する車で、誰も重傷を負ったり、命を落としたりすべきではない」
そして、2社は上記のビジョンを描くことで、従業員や関係者に感銘を与え、参加や支援を力強く呼びかけていると氏は述べています。
この意見に従えば、リーダーもまた、実現のために長期的な努力が必要な目標について、自らの言葉で示すことで、周囲に影響を与えることができそうです。新年度を迎え、新たに部下を持つことになった人は、こうした視点で今後の目標を考えてみるとよいかもしれません。
倫理的リーダーシップで若手社員の信頼を勝ち取る
また、ブダク氏によれば、リーダーは「ビジョン」に加え、「倫理的リーダーシップ」「長期的視点」「サーバントリーダーシップ」を身に付けることで、周囲の人たちにポジティブな影響を与えることができるといいます。
意味のある目標に向かって(ビジョン)、正しい方法で(倫理的リーダーシップ)、長い時間をかけて(長期的視点)、人のために奉仕すること(サーバントリーダーシップ)だ。
(『自分の能力が変わるカリフォルニア大学バークレー校超人気の授業』136ページ)
サーバントリーダーシップとは、「権力欲が強い」「自分を第一に考える」リーダーと真逆の姿で、自分よりも部下の利益を優先させるリーダーシップのことです。
また、倫理的リーダーシップは、正しい行動を一貫して取り続けるリーダーシップのこと。新入社員や若手社員との接点が多い人は、次の理由から、特に身に付けておきたい資質です。
現代人、とくにデジタルネイティブのミレニアル世代やZ世代〔1997年以降に生まれた世代〕は、うわべだけの言葉を見抜くのが得意だ。(中略)
「#MeToo」のような社会運動では、多くのリーダーが支持声明を出したが、熱心に他人に変革を呼びかけるわりには、自らの行動がそれに伴っていないケースが多々見られた。
倫理的であるためには、まず自らその行動を実践して、信頼を勝ち取らなければならない。(『自分の能力が変わるカリフォルニア大学バークレー校超人気の授業』145ページ)
「社員を大切にする」と言いながら、長時間労働を強制したり、パワハラ発言をしたりする。「オープンなコミュニケーションを推奨する」と言いながら、意見を述べた社員を罰する…。言行不一致なリーダーの例は、新聞や雑誌などでもよく見かけます。部下から信頼されるリーダーを目指すにあたっては、自分にそうした問題がないか点検してみることも重要でしょう。
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ちなみに、ビジョンや倫理的リーダーシップなどは、リーダーが「チェンジメーカー」になる上で重要な要素だと、ブダク氏は述べています。
チェンジメーカーとは、変化を起こすために必要な考え方、行動力、勇気、情熱、粘り強さを備えた人のこと。社会が加速度的に変化する今日、リーダーが成功するために、実務的な能力以上にこうした資質が必要だと氏は言います。その意味で本書は、現在リーダーを務める人はもちろん、これからリーダーを目指す若手社員にも手に取っていただきたい1冊です。
(編集部・油屋)
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「編集部員が選ぶ今週のPick Up本」は、日々多くのビジネス書を読み込み、その内容を要約している編集部員が、これまでに『TOPPOINT』に掲載した本の中から「いま改めてお薦めしたい本」「再読したい名著」をPick Upし、独自の視点から読みどころを紹介するコーナーです。この記事にご興味を持たれた方は、ぜひその本をご購入のうえ通読されることをお薦めします。きっと、あなたにとって“一読の価値ある本”となることでしょう。このコーナーが、読者の皆さまと良書との出合いのきっかけとなれば幸いです。
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