2024.2.13

編集部:油屋

知っているようで知らない “上手な最期”を迎えるために大事なこととは?

知っているようで知らない “上手な最期”を迎えるために大事なこととは?

 1月末、「TOPPOINTライブラリー」内の「ジャンル別オールタイムベスト10」の見直しを行いました。このコンテンツは、経営やリーダーシップ、ビジネススキルなどのジャンルごとに、今読んでおきたい必読の名著10冊を『TOPPOINT』編集部が選定したものです。

 (ジャンル別オールタイムベスト10の一覧はこちら

 今回新たに選出したのは、仕事で成果を出すための「礼儀のあり方」について事例を交えて解説した『Think CIVILITY 「礼儀正しさ」こそ最強の生存戦略である』(クリスティーン・ポラス/東洋経済新報社。ジャンルは「自己啓発」)と、『人はどう死ぬのか』(久坂部 羊/講談社。ジャンルは「ヘルスケア」)です。今回のPick Up本では、後者の『人はどう死ぬのか』をご紹介します。

 『人はどう死ぬのか』の著者である久坂部羊氏は、医師として長年にわたり高齢者医療に携わってきた方です。また、小説家としても活躍しておられ、日本医療小説大賞を受賞されています。本書では、様々な死を見届けてきた著者だからこそわかる、“上手な最期”を迎えるために知っておくべきことがわかりやすく綴られています。
 久坂部氏が考える、平穏な死への準備。それは、次のようなものだといいます。

 

私が看取った多くの患者さんや家族の死から考えて、上手な最期を迎えるコツは、要するに死を受け入れることです。

(『人はどう死ぬのか』94ページ)


 「死を受け入れる」とは、例えば、死を大げさにとらえたり、死の恐怖を都合の良いイメージでごまかしたりしないことです。死ぬことや不愉快な事実から目をそらし続けていると、死ぬ間際になって心身の苦痛に悩み、悲惨な死を迎えることになりかねない、と久坂部氏は言います。では、死を受け入れるにはどうすればいいのでしょうか?
 本書によれば、1つは、死と向き合い、しっかりと心の準備をすることです。
 世の中には今、長寿や健康に関する情報があふれています。メディアでは、80歳、90歳を超えても仕事を続ける人、趣味や運動をアクティブに続けている人など、元気で活躍する高齢者の姿がよく報道されています。その生き生きした姿を見て、自分もそうなりたい、と思う人は少なくないでしょう。
 しかし、久坂部氏は次のように警鐘を鳴らします。

 

元気で活躍する超高齢者は、テレビに映る場面では笑顔でも、実際はあちこち痛かったり(中略)、脳梗塞や心筋梗塞の予兆に怯えていたりと、さまざまな老いの現実に苦しんでいるはずです。でも、そんなことはいっさい伝えません。(中略)
楽観的なことばかり考えて、心の準備を怠ると、現実の老いに直面したとき、「こんなことになるとは思わなかった」「なぜこんなことになったのか」と、余計な嘆きに苛まれることになります。(中略)長生きを目指すなら、そういう不愉快な事実も視野に入れておく必要があるでしょう。

(『人はどう死ぬのか』126~127ページ)

 

 また、ピンピンと元気に老いて、死ぬ時は寝付かずコロリと逝くという意味の標語、「ピンピンコロリ」についても、久坂部氏は次のように述べています。

 

若いときから健康に注意して、節制しながら生活していれば、内臓が丈夫な分、コロリとは死ねません。(中略)ピンピンダラダラ・ヨロヨロヘトヘトになってしまいます。医療になどかかったら、それこそ簡単には死なせてもらえませんから、さまざまな老いの苦しみを抱えたまま、人生の最後をすごすことになります。

(『人はどう死ぬのか』128~129ページ)

 

 これは「不健康な生活を送った方がいい」ということでは決してありません。ただ、安らかな死を迎えるには、メディアでは目にすることが少ない「不愉快な事実」も視野に入れて備えておくべきだということです。死を迎える前には、老いの苦しみ・痛みがあるものなのだと覚悟を決めておくと、落ち着いて最期を迎えることができるそうです。

 死を受け入れる方法としてはまた、上手な最期とは反対の「下手な最期」を考えるのも効果的だといいます。久坂部氏の言う下手な最期とは、次のようなものです。

 

下手な最期とは、激しい苦痛に苛まれながら、死ぬに死ねない状態で時間を長引かせる死に方でしょう。医療用の麻薬や鎮静剤を使ってなお、なぜそんなことになるのかというと、無理やり命が引き延ばされるからです。回復の見込みがないのに、延命治療で生かされ続けるから、麻薬や鎮静剤も効かないほどの苦痛に襲われるのです。(中略)この例からもわかるように、最期を迎えるに当たっては、高度な医療は受けない方がいい。

(『人はどう死ぬのか』189ページ)

 

 医療技術は格段に進歩しましたが、それでもすべての病気が治せるわけではありません。むしろ、「治せない病気を無理に直そうとすることで、悲惨な状況になってしまうことがある」と、多くの患者さんを看取った著者は実体験を交えながら語っています。
 私たちは病気になるとすぐに病院へ行き、医師の診察や治療を受けようとします。そこで重大な問題が発覚したら、何としてでも治したいと思うことでしょう。ですが、延命治療は時として、更なる苦痛を招くことにもなりかねません。
 自分や家族が“死”に直面した時、また事件・事故に巻き込まれて命の危険にさらされた時、冷静な判断ができるとは限りません。むしろ、できない人の方が大多数ではないでしょうか。だからこそ、あまり考えたくはないテーマかもしれませんが、後悔しないためにも自分の最期はどう迎えるか、元気な時から周りの人と一緒に考えておく必要があるでしょう。

 『人はどう死ぬのか』は、人がどのように死を迎えるのか、また安らかな死を迎えるために何を検討しておくべきかを学ぶ上で参考になる書籍です。本書ではさらに、がんに関する誤解や安楽死の是非などについても、著者の経験を交え語っています。
まだお読みでない方には、是非おすすめしたい1冊です。

(編集部・油屋)

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 「編集部員が選ぶ今週のPick Up本」は、日々多くのビジネス書を読み込み、その内容を要約している編集部員が、これまでに『TOPPOINT』に掲載した本の中から「いま改めてお薦めしたい本」「再読したい名著」をPick Upし、独自の視点から読みどころを紹介するコーナーです。この記事にご興味を持たれた方は、ぜひその本をご購入のうえ通読されることをお薦めします。きっと、あなたにとって“一読の価値ある本”となることでしょう。このコーナーが、読者の皆さまと良書との出合いのきっかけとなれば幸いです。

2022年6月号掲載

人はどう死ぬのか

「死」は必ずやってくる。自分にも、家族にも。この時、悔いを残さないためには? 在宅診療医として様々な死を見届けてきた著者が、死の実際について語った。健康増進に努めた人ほど老いの苦しみを抱える。高度な治療は受けない方がいい…。上手な最期を迎えるために知っておくべきことが説かれた「死に方」の教科書だ。

著 者:久坂部 羊 出版社:講談社(講談社現代新書) 発行日:2022年3月
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