「読書の秋」と言われるように、秋は落ち着いて本を読むのによい季節です。10月27日~11月9日は読書週間。小説、ビジネス書、教養本などを、秋の夜長にじっくりと楽しまれる方も多いのではないでしょうか。
ただ、読書で気をつけたいのが、熱中しすぎて夜更かしした結果、翌日は寝不足に…という事態。充実した読書体験のためには、睡眠をきちんととりたいものです。
そこで今週は、質の良い眠りがいかに大切かを、睡眠の研究者らが明らかにした本、『Sleep, Sleep, Sleep』(クリスティアン・ベネディクト、ミンナ・トゥーンベリエル/サンマーク出版)をPick Upします。
「睡眠の重要性なんて、いまさら言われなくてもわかっている」。そう思われた方もいるかもしれません。寝不足で頭がボーっとして仕事に集中できない、といった経験は、誰しもあるものでしょう。
ですが、睡眠がおよぼす悪影響は、仕事の生産性低下にとどまりません。例えば、厚生労働省の『令和4年版過労死等防止対策白書』は、次のように指摘しています。
1日の平均的な睡眠時間別にうつ傾向・不安(K6)をみると、睡眠時間が「7~8時間未満」で最もうつ傾向・不安がある者の割合が低く、それより睡眠時間が減少するにつれてうつ傾向・不安がある者の割合が高くなる傾向がみられた
(『令和4年版過労死等防止対策白書』 131ページ)
このデータは睡眠とうつ傾向・不安の因果関係までを示したものではありませんが、睡眠と「心の健康」との間には関連があることがうかがえます。
では、睡眠不足には、どんな弊害があるのか? 『Sleep, Sleep, Sleep』は、多岐にわたる影響を指摘しています。本書の「目次」からいくつか見出しを引用すると――。
“一晩寝不足で「脳老廃物」が5%増える”(8章)
“寝不足で「食事のサイズ」が大きくなる”(9章)
“睡眠不足で「感染症」にかかりやすい”(10章)
“体は寝足りないと「血糖値」が上がるつくりになっている”(11章)(『Sleep, Sleep, Sleep』 目次)
「自分の睡眠は充分だろうか」と、少しぎくりとしませんか?
では、どうすれば質の良い睡眠をとれるのか。本書では、日中の過ごし方から、寝室の環境、食事内容など、よく眠るための1日の過ごし方を解説しています。
睡眠が私たちの心身にもたらす影響、そして良質な睡眠のとり方…。それらを数々の科学的根拠をもとに解説した『Sleep, Sleep, Sleep』は、世界中で読まれています。
TOPPOINTの要約でも、体内時計、運動、認知症、免疫システムなど、睡眠と健康に関する多様な要素について紹介しています。本書を読めば、「今日からきちんと眠ろう」と思えるかもしれません。
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ショーペンハウアーは、古典的名著『幸福について ―人生論―』(ショーペンハウアー/新潮社)の中で、次のように述べています。
――とりわけ脳にはその思索に必要な十分な程度の睡眠を与えるがよい。睡眠の人間に対する意義は、時計ならばぜんまいを巻くようなものだからである。
(『幸福について』 259ページ)
秋の夜長に、読書を通じて思索を深めることはもちろん素晴らしいことですが、あわせて、睡眠のとり方にも気を配ってみてはいかがでしょうか。
(編集部・西田)
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「編集部員が選ぶ今週のPick Up本」は、日々多くのビジネス書を読み込み、その内容を要約している編集部員が、これまでに『TOPPOINT』に掲載した本の中から「いま改めてお薦めしたい本」「再読したい名著」をPick Upし、独自の視点から読みどころを紹介するコーナーです。この記事にご興味を持たれた方は、ぜひその本をご購入のうえ通読されることをお薦めします。きっと、あなたにとって“一読の価値ある本”となることでしょう。このコーナーが、読者の皆さまと良書との出合いのきっかけとなれば幸いです。
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