2023.9.25

編集部:西田

「最高のリーダー」は、何を考え、行動するのか 1000人以上の社長を取材して得た結論とは?

「最高のリーダー」は、何を考え、行動するのか 1000人以上の社長を取材して得た結論とは?

 「鼓腹撃壌」という言葉があります。政治が行き届き、人々が太平の世を楽しんでいるさまを表す四字熟語ですが、これは、次のような故事に基づくものです。

 ――古代中国の名君、尭は、ある時自分の治世がうまくいっているのか不安に思った。
 そこでお忍びで領内を視察したところ、1人の老人に出会う。
 老人は、腹つづみを打ち(鼓腹)、地面を踏み鳴らして(撃壌)、幸せそうに歌っていた。
 「日が出れば働き、日が沈めば休む。井戸を掘って水を飲み、田畑を耕して食べ物を得る。帝の力など、私に何の影響があるだろうか」
 それを聞いて、尭は天下がよく治まっていると確信し、安心したという――。

 尭の優れた統治によって幸せな生活が実現しているにもかかわらず、民は尭のおかげと思っていない。一応、帝がいることは認識しているものの、特にありがたがっているわけでもない。尭は尭で、それを不満に思うでもなく、むしろ喜んでいる…。

 この故事が語っているのは、リーダーの1つの理想像です。
 中国古典の第一人者、守屋洋氏は、著書『世界最高の人生哲学 老子』(SBクリエイティブ 刊)で、この故事を『老子』の次のような一節と関連づけています。

 

太上は下これあるを知る。その次は親しみてこれを誉む。その次はこれを畏る。その下はこれを侮る。(中略)

最も理想的な指導者は、部下からことさら意識されることはない。それよりも一段劣るのは、部下から敬愛される指導者、さらに劣るのは、部下から恐れられる指導者、最低なのは、部下からバカにされる指導者である。

(『世界最高の人生哲学 老子』 208ページ)

 

 部下から意識されないリーダーは、部下から敬愛されるリーダーに勝る、というのです。
 この点、直感的にはなかなか理解しづらいように思います。カリスマ性に溢れ、慕われるリーダーの方が、いるのかいないのかわからないようなリーダーよりも成果を上げられるのでは? と疑問に思う方もいるでしょう。
 今週PickUpするのは、こうした疑問に現代の経営の観点から答える本、『最高のリーダーは何もしない 内向型人間が最強のチームをつくる!』(藤沢久美 著/ダイヤモンド社 刊)です。

 本書の著者、藤沢久美氏は、1000人以上の社長を取材した結果、次のようなリーダー像の変化に気づいたといいます。

 

どういうわけか、いま最前線で活躍している優秀なリーダーほど、リーダーらしい仕事を何もしていないように見えます。(中略)
リーダーというと、「即断即決・勇猛・大胆」「ついていきたくなるカリスマ性」「頼りになるボス猿」というイメージを持つ方が多いのではないかと思います。
しかし、そうしたリーダー像は、過去のものになりつつあります。
いま最前線で活躍しているリーダーたちは、権限を現場に引き渡し、メンバーたちに支えられることで、組織・チームを勝利へと導いています。
「優秀なリーダーほど『リーダーらしい仕事』を何もしていない」というのは、まさにそういうことなのです。

(『最高のリーダーは何もしない』 1ページ、4~5ページ)

 

 では、ただぽつねんと座っているだけの人が最高のリーダーなのか、というと、もちろんそうではありません。最高のリーダーは、働く目的――「ビジョン」をつくり、メンバーに浸透させている、と著者はいいます。

 

ビジョンに基づいてメンバーが自律的に動くチームをつくれれば、リーダーは現場への指示に時間を奪われなくなります。そこで生まれた時間を使って広く世の中を観察し、次なる展開を考え、変化に備える――こうした好循環を生み出し、メンバーとともに成長する組織をつくることこそが、これからのリーダーの仕事です。
組織やチームの誰よりも静かに考え続けること。
未来を見つめ続けること。
そんな「本来の仕事」にリーダーが徹すれば徹するほど、その姿は「何もしていない」ように見えるのです。

(『最高のリーダーは何もしない』 36ページ)

 

 これまで求められていた、即断即決でカリスマ性あるリーダーには強い求心力がありますが、メンバーの依存心を助長する可能性があります。コロナ禍のように円滑なコミュニケーションが難しくなった場合には、リーダーの指示がうまく部下に伝わらないこともあるでしょう。『老子』のいう「親しみてこれを誉む」「これを畏る」リーダーでは、対応が難しいこともあるのです。
 一方、リーダーの思想や方向性が部下に浸透しきっており、あえてその存在を意識するまでもない、「下これあるを知る」のチームはどうか。リーダーが逐次指示を出せないような状況下でも、チームの価値観や目指す先に基づいて、自律的にメンバーが対応することができるのです。

 こうした「最高のリーダー」たちは、どのようにして魅力的なビジョンをつくり、人や組織に浸透させているのでしょうか? そのカギを、本書は「6つの発想転換」として紹介しています。
 「人を動かす」から「人が動く」へ。「やるべきこと」から「やりたいこと」へ。「命令を伝える」から「物語を伝える」へ…。いずれも、1000人以上の社長への取材から見えてきた、現場の実践に裏打ちされたものです。
 豊富な実例とともに語られる本書の内容は、チームの大小を問わず、リーダーがチーム全体のポテンシャルを引き出すための助けとなってくれるでしょう。

(編集部・西田)

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 「編集部員が選ぶ今週のPick Up本」は、日々多くのビジネス書を読み込み、その内容を要約している編集部員が、これまでに『TOPPOINT』に掲載した本の中から「いま改めてお薦めしたい本」「再読したい名著」をPick Upし、独自の視点から読みどころを紹介するコーナーです。この記事にご興味を持たれた方は、ぜひその本をご購入のうえ通読されることをお薦めします。きっと、あなたにとって“一読の価値ある本”となることでしょう。このコーナーが、読者の皆さまと良書との出合いのきっかけとなれば幸いです。

2016年4月号掲載

最高のリーダーは何もしない 内向型人間が最強のチームをつくる!

1000人以上の社長を取材した著者によれば、カリスマ型のリーダーは過去のものとなりつつある。今日、優秀なリーダーは内向的で、何もしない。ビジョンを語れば、あとは現場任せ。本書では、ユニークな起業家、経営者などの事例を基に、組織を勝利へ導く上で大切な、新しい「ビジョン型リーダーシップ」について説く。

著 者:藤沢久美 出版社:ダイヤモンド社 発行日:2016年2月
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