
ゴールデンウィークが終わりました。ビジネスパーソンの皆様は、連休をどのように過ごされたでしょうか。新型コロナの流行が落ち着いたため、旅行に出かけられた方も多いと思います。逆に、家で読書三昧、という方もおられるかもしれません。
いずれにしても、大型連休後の出社は、足が重くなります。2019年に行われた調査によれば、3日間以上の連休明けに「仕事が辛い」と感じる人は8割を超えています(【ビジネスパーソンの休み明け本音調査】/株式会社スタッフサービス・ホールディングスプレスリリース/PRTIMES2019年5月7日)。
仕事が辛いと感じながら積み重なった業務をこなしていくのは、ストレスがたまるだけでなく、集中力も途切れがちになるでしょう。
また、この時期は“体調”も崩しやすくなります。連休中の疲労に加えて、新年度からたまっていた疲れやストレスも出てきます。不眠や食欲不振などの症状が現れたら、「5月病」のサインかもしれません。今のうちに対策をとっておかなければ、6、7月頃にメンタルの不調に陥り、悪化すれば「うつ病」へと進行する危険性もあります。
そこで今回は、心身の調子を整えるための参考となる1冊、『マインドフルネスストレス低減法』(J. カバットジン/北大路書房)をPick Upします。
本書は、マサチューセッツ大学メディカル・センターのストレス・クリニックで行われている、8週間の「ストレス対処およびリラクセーション・プログラム」の10年におよぶ臨床体験をもとに執筆されたものです。著者であり、プログラムの開発者でもあるジョン・カバットジン氏は、読者がこのプログラムを自ら実習しながらマスターできるよう整え、「マインドフルネス瞑想法」として紹介しています。
さて、マインドフルネス瞑想法とは、どのようなものなのでしょうか。
「マインドフルネス瞑想法」は、“注意集中力”を高めるためのトレーニングを体系的に組みたてたものです。これは、アジアの仏教にルーツをもつ瞑想の一つの形式を基本としています。注意を集中するということは、“一つひとつの瞬間に意識を向ける”という単純な方法です。
(『マインドフルネスストレス低減法』 2ページ)
私たちはふだん、「一つひとつの瞬間」を十分に意識することはないのではないでしょうか。仕事をしながら、「連休中の旅行は楽しかったな」とか、「この仕事を上司に提出する時、どう報告しようか」など、“今”ではなく、過去や未来に思いを巡らしがちです。疲れやストレスがたまっている時などは、なおさら。こうした注意散漫な状態で仕事をしていると、ミスを招きかねません。
その意味で、注意集中力を高めてくれるマインドフルネス瞑想法は、ビジネスパーソンが身につけておきたいスキルの1つといえます。
では、実際に集中力を高めるために、どのようなトレーニングを行うのでしょうか。そのカギは、“呼吸に注意を向ける”ことにあります。
「マインドフルネス瞑想法」を修得する最も簡単で効果的な方法は、自分の呼吸に注意を集中しながら、そのあいだにどんなことが起こるかを観察するという方法です。(中略)鼻孔で観察する場合は、鼻孔を通過する息の流れに注意を集中します。
(『マインドフルネスストレス低減法』 78ページ)
呼吸に注意を向けることによって、自分に集中することができるのです。(中略)また、呼吸に注意を集中することで、心と体の落ち着きが得られます。すると、自分の思いや感じ方を、非常に落ちついた状態で眺めることができるようになります。そして、ものごとを、より洞察力に富み、より明確で、より大きな視点でとらえることができるようになるのです。
(『マインドフルネスストレス低減法』 85~86ページ)
呼吸に注意を集中させることで、心身に落ち着きを取り戻すことができる、と著者は言います。この呼吸法のエクササイズとして、本書では2つの方法を紹介しています。
まず1つは、特定の時間帯を設定して毎日15分程度行う“正式なトレーニング”。これは椅子に座るか、あおむけになって行います。もう1つは、いつでもどこでも短時間でできる“ふだんのトレーニング”。2つを組み合わせることで、効果が上がるといいます。
私も実践してみましたが、確かにエクササイズをすると気持ちが落ち着き、視界がはっきりする感覚がありました。ただし、正式なトレーニングの方はしばらくしてサボってしまい、今はもっぱら、ふだんのトレーニングだけになってしまっていますが…。それでも、通勤時の電車の座席や昼休みの職場の椅子に座ってゆっくりと呼吸をし、心を集中させていると、気持ちが落ち着いてくるのを感じます。
マインドフルネスは近年、グーグルやヤフーなど数々の企業で研修に取り入れられています。『マインドフルネスストレス低減法』は、そうしたトレーニングを1人で手軽に実践するための手引書として、お薦めします。連休明けの今から、継続して実践すれば、夏に向けて健やかな心身を保てるのではないでしょうか。
(編集部・小村)
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「編集部員が選ぶ今週のPick Up本」は、日々多くのビジネス書を読み込み、その内容を要約している編集部員が、これまでに『TOPPOINT』に掲載した本の中から「いま改めてお薦めしたい本」「再読したい名著」をPick Upし、独自の視点から読みどころを紹介するコーナーです。この記事にご興味を持たれた方は、ぜひその本をご購入のうえ通読されることをお薦めします。きっと、あなたにとって“一読の価値ある本”となることでしょう。このコーナーが、読者の皆さまと良書との出合いのきっかけとなれば幸いです。
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