2022.9.12

編集部:油屋

マーケティング戦略の両巨頭が語る! ビジネスの成否を左右するマーケティング「不変の法則」

マーケティング戦略の両巨頭が語る! ビジネスの成否を左右するマーケティング「不変の法則」

 2022年上半期のTOPPOINT大賞で5位に選ばれたビジネス書、『永守流 経営とお金の原則』。その中で、日本電産会長の永守重信氏が、次のように述べていました。

 

―― ベンチャー企業を立ち上げたとき、経営トップがこれだけは他人に委ねてはいけない、というものがある。それはマーケティング(セールス)である。
(中略)どんなにいい技術を持っていてもモノが売れなければお金が入ってこない。お金が入らなければ企業は存続できない。市場で売れるモノを持っていない企業に対して、銀行もお金を貸さない。これは当たり前の話であるが、この当たり前のことが分かっていない経営者が多いのである。

 

 永守氏はベンチャー創業者に向けて指摘していますが、経営トップに限らず、管理職やリーダー職の方にもマーケティングの知識・実践が求められる機会はあります。
 そこで今回は、数あるマーケティング本の中から、『売れるもマーケ 当たるもマーケ マーケティング22の法則』(アル・ライズ、ジャック・トラウト/東急エージェンシー出版部)をご紹介します。

 著者は、世界的に知られるマーケティングの戦略家、アル・ライズとジャック・トラウト。本書では、彼らが25年以上にわたる研究の末に導き出した基本的、本質的なマーケティングの法則22項目について解説しています。

 最初に登場するのは、「一番手の法則」です。
 マーケティングは「自社の商品やサービスが他より優れていることを顧客に納得させることだ」と信じている人は少なくありません。ですが、その考えは間違っている、と著者は指摘します。

 彼らによれば、マーケティングとは、「先頭を切れる分野を創造すること」。そして、他社より自社の商品の方がベターであると人に納得させるよりも、最初に顧客の心に入り込むことの方が重要だといいます。
 それを説明するために、彼らは次の問いを投げかけます。

 

  • ①大西洋を最初に単独で横断飛行した人物の名前は?
  • ②大西洋を二番目に単独飛行した人物の名前は?

 

 ①の答えが、チャールズ・リンドバーグだと知っている人は多いかと思います。ですが、②の答えをご存じの方は少ないのではないでしょうか(正解は、バート・ヒンクラー)。

 ヒンクラーはリンドバーグよりも腕のいい飛行士で、少ない燃料で、速く飛行することができたそうです。つまり、ヒンクラーはリンドバーグより「ベター」でした。しかし多くの人の記憶に残っているのは、“最初に”単独飛行に成功したリンドバーグです。
 この話から、他に優っていることより、先頭を切ることの方が大切だと実感できます。

 この一番手の法則は、どんな製品、ブランド、カテゴリーにも当てはまります。コーラのコカコーラ、輸入ビールのハイネケン、雑誌のタイム…。これらはみな、アメリカの顧客の心に最初に入り込み、市場をリードするブランドです。

 「一番手になることは、ベターであることに優る」。マーケティングに取り組むすべての人にとって、心に留めておきたい法則です。

 

 

 では、これまでにない製品を作ることに注力すればいいのでしょうか? 一番手になれば必ず成功するといえるでしょうか?
 直観的に、そうとは言えない気がします。

 世界初のパーソナルコンピュータは、MITS アルテア 8800でした。最初の自動車を世に出したのはデュリア社、最初の洗濯機を作ったのはハーレイ社です。
 一番手の法則からすれば、各社の商品はナンバーワンブランドになっているはず。ところがこの商品、企業はもはやこの世に存在していません。似たような事象は、他の業界・商品でも見受けられます。

 著者らは、一番手の法則に誤りがあるわけではなく、ただ、「心の法則」がこれに修正を加えるのだといいます。市場に最初に参入するよりも、顧客の心の中に最初に入り込むことが大事。そして、市場に最初に参入することは、顧客の心の中に真っ先に入り込むという限りにおいて重要であるに過ぎない、というのです。

 例えばAppleのiPhoneは、スマートフォン市場に真っ先に参入したわけではありません。コロナ禍で浸透した「Zoom」にしても、以前からオンライン会議ツールは存在していました。このように、マーケティングにより顧客のマインドをしっかりと掴むことに成功した後発商品・サービスは少なくないのではないでしょうか。

 何かを始める際、私たちはこれまでにない新しいアイデア、ビジネスモデルを考えようとしがちです。ですが、「心の法則」に従えば、アイデアをどう顧客の心の中に吹き込むかを考えることの方が重要、ということがわかります。

 本書は1994年の発行ですが、紹介される「不変の法則」は今の時代にも十分通用するはず。ビジネスで行き詰まりを感じた時、解決のヒントを与えてくれる名著です。

(編集部・油屋)

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 「今週のPick Up本」では、ビジネス書に日々触れている小誌の編集部員が、これまでに要約した書籍の中から「いま改めておすすめしたい本」「再読したい名著」をご紹介します。次回の“Pick Up本”もお楽しみに。

2017年5月号掲載

売れるもマーケ 当たるもマーケ マーケティング22の法則

マーケティングに「不変の法則」はあるか? 消費者の意識が多様化した今日、なさそうにも思える。だが、存在の肯定派である2人のマーケティング戦略家が紹介する法則は、長年の研究の末に導き出した基本的、本質的なものばかり。説得力は十分だ。ビジネス活動で行き詰まりを感じた時、解決のヒントを与えてくれるだろう。

著 者:アル・ライズ、ジャック・トラウト 出版社:東急エージェンシー出版部 発行日:1994年1月

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